2015年10月の読書メーター読んだ本の数:10冊
読んだページ数:1795ページ
ナイス数:80ナイス
蒼き狼 (新潮文庫)の
感想チンギスカンの一生を記した大著。驚かされたのは、チンギスカンの征服欲だ。モンゴル高原は少数民族が互いの縄張りの中で小競り合いする程度の小さな地域でしかなかったのに、そこで生まれたチンギスカンは、正に家族親族だけしかいない集落から始まって、最後には東は中国、西はシリアやブルガリア、北はロシアまで版図を広げる。モンゴル統一に留まらず、仇敵中国の征服にも満足せず、イスラム圏や欧州にまで版図を広げる程の征服欲には、理解し難い執念じみた信念すら感じられるほど。それを全て描き切った本書はまさに一大叙事詩。必読。
読了日:10月3日 著者:
井上靖
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/13 号 [「模範国家」ドイツの現実]の
感想今週はEUの模範的国家、ドイツ特集。その中で気になったのは、ドイツの敗戦処理と日本の戦後処理を単純比較することは早計と断じる記事。これは自分も薄々感じていたことだがうまく言葉にできなかった思いだったため、今回のこの記事出会えたことは幸運だった。この記事を読むためだけでも今回のニューズウィークを購入する価値がある。
読了日:10月7日 著者:
「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)の
感想現代の素粒子物理学について非常に簡単でわかりやすく解説してくれてる名著。なぜ重力はかくも弱いのか、単純なその謎についてひたすら研究を重ねてきた物理学者たちの、シンプルで画期的な一つのアイデア。それが「この世界は三次元ではなく五次元以上の空間で形成されている」とする仮説だ。科学というのは、どれだけ素っ頓狂な仮説だったとしても、その仮説で現象を説明できればそれが正しいと受け入れられる面白い社会。そんな中で生き残ってきた仮説の数々はどれも過激でありながら、どこまでもエキサイティングだ。最高の一冊。
読了日:10月9日 著者:
村田次郎
世界情死大全―「愛」と「死」と「エロス」の美学 (文春文庫)の
感想本書で取り上げられているのは「愛憎と死」。歴史上の様々な愛憎劇を実話創作からめて取り上げ、それぞれの時代背景とともに紹介していく。ただその紹介の仕方には一貫性がなく、神話における悲恋の話が出たかと思うと、次の節では異常快楽殺人者ジェフリーダーマーが取り上げられたりするため、頭の切り替えが追いつかず気持ちの悪い思いをした。またエピソードのひとつひとつが数ページしかないため、余韻に浸る間もなく次々と物語が展開するため少し疲れてしまう。世界の様々な愛憎劇の片鱗を味わいたいのであれば読んでみると良いかも。
読了日:10月11日 著者:
桐生操
日本版ニューズウィーク [雑誌]の
感想表題にある通り、現在のシリアを取り巻く環境はまさしく絶望。かつての美しい街並みや遺跡などは無残に破壊され、街を横断するだけでも数々の検問を通らねばならないため16時間もかかる。かつてはバスで一本通過するたけだったアッポラは、いまやそんな死と銃弾と絶望だけが漂う地獄の街と化しているという。難民問題にも解決の糸口が見つからぬままロシアが謎の軍事介入まで行い、更に中東情勢は混乱を極めている状況。平和的解決はいつのことか。
読了日:10月14日 著者:
アリストテレス はじめての形而上学 (NHKブックス No.1192)の
感想表題にある「はじめての」という言葉は参考にならないので注意が必要。これはあくまで「ある」ということに対し徹底的に問いを重ねていき、それをアリストテレスはどのように捉え、考えていたかを一から考察している本だ。その構成と解説は見事なもので、最初は点・線・面とは何かという問いから始まり、「ある」を考えるためにウーシアをどのようにカテゴライズし解釈するかに至って、そこから魂・生命への問いに繋がり、最後に時間とは何か、と問う構成は非常に分かりやすく面白い。非常に体力のいる読書でありました。
読了日:10月17日 著者:
富松保文
昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか (文春新書)の
感想戦争という国家壊滅の危機にあってなお省益を最優先で考えた大臣たちの愚鈍さ、そんな愚か者をトップに据えた人事の間抜けさ、危急存亡のときでさえ平時と同じ仕事しかこなさない官僚の危機意識の無さ、事なかれ主義で作戦を進める司令長官の無能さ、好戦的な中堅を抑えることもできぬ優柔不断なトップ、などなど、問題を論えばキリがない。兵器は職人的技術で支えられ、前線は臨機応変で優秀な指揮官が揃っていたにもかかわらず、中枢が無能で国家の危機を他人事に構えていたことが何よりの悲劇だったのだ。こんな悲劇を繰り返してはならない。
読了日:10月20日 著者:
半藤一利,秦郁彦,平間洋一,保阪正康,黒野耐,戸高一成,戸部良一,福田和也
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/27 号 [歴史戦争 勝者なき不毛な戦い]の
感想特集のひとつは東アジアの歴史戦争。中国が申請した、南京大虐殺の記憶遺産申請をユネスコが受諾したことに対し、日本が拠出金の差し止めを匂わせたことは記憶に新しい。それに対し本書では「中国は南京大虐殺を記憶遺産に登録するなら、数百万人を死に追いやったと公式に認めている文化大革命も記憶遺産に登録すべきだ」と述べでおり、痛快でありました。またパレスチナとイスラエル間の紛争がさらに激化していることも記事で紹介されており、暗澹たる気分にふけることしきり。
読了日:10月22日 著者:
甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)の
感想今回はアニメで大活躍していたエレメントリタリオの面々のショートストーリー。原作とアニメでは彼女らの設定に大きな乖離があったはずですが、まあそこは原作者の都合で知らぬ間にアニメ準拠の設定に改変されていたのもご愛嬌。それでもサーラマの受難やミュースの胃が痛くなるような飲み会のエピソードは相変わらずのクオリティで安心して読み切ることができました。やはりこのシリーズは鉄板ですね。次回も楽しみです。
読了日:10月24日 著者:
賀東招二
そして、メディアは日本を戦争に導いたの
感想昭和一桁台の時代、まさに日本にとっては太平洋戦争開戦直前のこの時期、メディアはどのように国民を扇動していったのかに興味があって手に取った。やはり大きな問題はメディアが日露戦争を介して売り上げ至上主義へ走ってしまい、売れるための記事、つまり好戦的な記事しか書かなくなったことか大きいように思う。もちろん国家からの圧力も大きいが、最初の躓きはメディアとしての正義感や矜持を失ってしまったことが大きいように思う。
読了日:10月25日 著者:
半藤一利,保阪正康読書メーター
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