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2015年の読書まとめ

2015年の読書メーター
読んだ本の数:103冊
読んだページ数:28851ページ
ナイス数:939ナイス

Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 12/9号 [アメリカの「正義」]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 12/9号 [アメリカの「正義」]
読了日:1月2日 著者:
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 12/16号 [その薬、本当に安全ですか?]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2014年 12/16号 [その薬、本当に安全ですか?]
読了日:1月2日 著者:
メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書)メリットの法則――行動分析学・実践編 (集英社新書)感想
行動分析学という新しいタイプの心理学入門書。この分野の本を読むのはこれが初めてなのだが、素人の自分にも難なく読み切れるくらい平易に解説されており、それでありながら行動分析学の骨子となるる考え方を理解できた気にさせてくれるのは著者の力量か。とりわけ、行動というものは原因と結果が逆である、という主張は新鮮で興味深かった。その人が何を期待しているのか、またどんな行動をしたら何が起きるのかを学ばせることの方が問題行動の治療に役立つというのは面白い。類書も読んでみたいと思わせてくれる一冊だった。
読了日:1月5日 著者:奥田健次
アドラー 人生を生き抜く心理学 (NHKブックス)アドラー 人生を生き抜く心理学 (NHKブックス)感想
人間の行動は目的こそが先に決まっており、その目的に沿った行動をとるに過ぎない。行動分析学では行動一つ一つに焦点を当てて好子と嫌子を巧みに織り交ぜた治療を見出す実践的な学問だが、アドラーが目指すところはもっと根源的。人への関心、すなわち共同体感覚こそ人間として重要な営みであり、人への貢献こそがよき人生と総括する。それは他者への貢献、他者への関心、課題への挑戦へ繋がり、よりよい人生、よりよいライフスタイルの確立なのだ。これまでの悪いライフスタイルを意識上に浮上できたなら、あとはそれを改善するための決意のみ。
読了日:1月14日 著者:岸見一郎
小説講座 売れる作家の全技術  デビューだけで満足してはいけない小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない感想
この手の本は何冊か読んだことがあるけど、現在の出版業界やプロとしての心構えなど、非常に冷酷で厳しい現実を思い知らせてくれる良書。「誰も見たことのない話を創れ」とはよく言われるが、そんなものを作る手法や技術などあるはずもなく、ただひたすら悩んで考えてひたすら唸って、脳みそを限界まで絞りきった後に出てくるものなのだと痛感。興味深い一冊だった。
読了日:1月20日 著者:大沢在昌
疾走 上 (角川文庫)疾走 上 (角川文庫)
読了日:1月21日 著者:重松清
最貧困女子 (幻冬舎新書)最貧困女子 (幻冬舎新書)感想
もっとも可視化されにくい層に潜む、最底辺の貧困に喘ぐ人とはどのような人たちなのか、その一部を本書はまざまざと浮かび上がらせる。それは周りの人間が「この人を助けたい」と思えない人々のことだ。作中で筆者が訴える「どうしようもなく可愛げのない」人間のことであり、自分の力で「助けてくれ」と訴える力すらない人間のことだ。そういった人たちを救うには、日本社会はあまりに寛容性が欠けていると思えるし、自分もまだ解決策を見いだせずにいる。
読了日:1月21日 著者:鈴木大介
疾走 下 (角川文庫)疾走 下 (角川文庫)感想
終盤の描写は涙無くして読めない。痛めつけられ、寒さの中打ち震えるしかなかった主人公が、最後に手に入れるほんのひとときの安らぎ。その安らぎは、真冬の雨の中、寄り添うことでしか暖をとれない仔猫の兄妹のような儚さだけど、だからこそ、手を繋ぎ、頬を寄せあう温もりが何よりの救済に思えてならない。本書はどこまでも暗く、陰鬱で、哀しみの底の底までずぶずぶにはまってしまう物語だ。それでも、人間の本質に宿る輝かしい優しさを覗かせてくれる、希望の物語でもある。巻置くこと能わず、とはまさに本書のこと。
読了日:1月22日 著者:重松清
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! (ファミ通文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! (ファミ通文庫)感想
ベッタベタな王道スポ根ラノベ。 ベタベタと言っても揶揄や貶してるわけでは決してなく、王道とも呼ぶべき展開を見事に表現し、完成させた手腕は見事と言うほかない。惜しむべきは陽炎と曙の二人に物語の主眼が置かれすぎてて、長月や霰の苦悩とそれを乗り越える達成感が幾分か端折られていたことか。 しかしそれを差し引いても面白さ抜群のライトノベルだったことは間違いない。オススメ。
読了日:1月26日 著者:築地俊彦
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 2 (ファミ通文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 2 (ファミ通文庫)感想
まさに王道!本当に面白かった。所々で艦これファンであればにやりとするセリフが挟まれるが、それぞれが実に状況とマッチしてて、胸を熱くしてくれる。特に「このクソ提督!」や「不知火に落ち度でも?」のセリフにはやられた。このセリフをあの場面で言わせるとは。こんなん泣いてまうよ。アニメ版ももっと見習ってほしいなあ。
読了日:1月29日 著者:築地俊彦
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!3 (ファミ通文庫)特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!3 (ファミ通文庫)感想
今回も面白かった!自分たちの矜持に準じ、優秀で有望な若者たちを自分たちの巻き添えをさせないためにひたすら拒否し、離れようとする提督たちの思惑と心痛はどれほどのものだったのか。それでも、絶望的な戦況の中にあって我らが第十四駆逐隊は一切の恐れも呵責もなく敵を屠り、戦い抜く。その堂々たる姿たるや英雄と呼ぶほかない。なんと雄々しく、かっこよくて、清々しい連中であろうか!いやはや、本シリーズは本当にオススメですぞ。みんなも読んでほしい!
読了日:1月31日 著者:築地俊彦
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!4 (ファミ通文庫)特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!4 (ファミ通文庫)感想
スポ根、バトル物ときて、今度は体育祭!驚かされるのは作者の作品の幅の広さ。これまで良い意味での王道ストーリーを楽しませてくれたけど、今回もまたこれまでとは違った雰囲気での王道を存分に楽しめた。常に死と隣り合わせの緊迫した雰囲気で紡がれる物語も面白いけど、今回のように最初から最後まで徹底的にバカになれるお話もまた魅力的。この作者の過去の作品もチェックしてみたい。
読了日:2月2日 著者:築地俊彦
イスラム国 テロリストが国家をつくる時イスラム国 テロリストが国家をつくる時感想
ISISがアルカイダよりも凶悪で狂暴なテロリスト集団である、というのは知識としてあった。だが本当に恐るべきは、彼らが近代的な組織構造をもっており、国家たらんと活動していることだ。制圧した地域住民を抑圧していたアルカイダと異なり、上下水道を作り、市場を作り、学校を建て、地域住民のコンセンサスを得る。近代的な国家建設とイスラム国の違いは、それが革命によってもたらされるか、テロによってもたらされるかの違いでしかない。その事実には強い興味を覚えた。
読了日:2月9日 著者:ロレッタナポリオーニ,池上彰
はたらく魔王さま! (12) (電撃文庫)はたらく魔王さま! (12) (電撃文庫)感想
今回の見どころは何と言っても恵美のデレ!恵美は戦闘力は高いものの精神的には意外にか弱い、というのは以前から何度となく描写されてきたけど、今回はその部分が前面に押し出されてきた回。しかも英雄に対する社会正義や義務、自由、権利といった部分にも果敢に踏み込んで描写する作者の筆力には脱帽。「俺にその力があるからって、なぜ俺がお前たちのために働かにゃならんのだ」「エンテイスラのために働いた恵美に、あいつらがしたことを忘れたとは言わせねえ」(意訳)などは至言だ。やっぱり真奥はかっこいい。
読了日:2月11日 著者:和ヶ原聡司
イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか (中公新書)イスラム過激原理主義―なぜテロに走るのか (中公新書)感想
イスラム国が台頭してきてるためイスラム原理主義関連の本をまとめて購入した。その中でも本書は1996年にエジプトのルクソールで発生した外国人観光客虐殺事件を題材に、なぜこれほど残虐なテロ組織が結成されてしまったのかを、エジプトの風土や環境、宗教や歴史を交えながら解説してる。ひとつひとつの解説は非常に詳細なのだが、すべてを理解することは困難だった。良書ではあるが、人を選ぶ本だった。
読了日:2月17日 著者:藤原和彦
テロ―現代暴力論 (中公新書)テロ―現代暴力論 (中公新書)感想
60年代以降に実行されたテロをまとめ、それらの目的や世界に与えた影響を論じた良書。テロとは行動による宣伝であり、特にテレビネットワークやインターネットで世界中の人が「観客」として事件を目撃できるようになってから、テロの過激化への懸念で本書は結ばれているが、まさしく現在、ISISがYouTubeやTwitterを効果的に使って暴力的プロパガンダを効率的に広めていることは注視すべきだろう。なぜテロが起きるのか、冷戦以前と以後でどのように変遷してきたのかを理解するのに非常に優れた良書だった。
読了日:2月20日 著者:加藤朗
本当の戦争の話をしよう (文春文庫)本当の戦争の話をしよう (文春文庫)感想
これは戦争での戦いを克明に描いたものではない。戦争によって狂わされた精神や人生の物語だ。戦争について語るには戦争の話をすべきではない、とは本書内にも訳者あとがきにもでてくるが、読み終えた今はその表現が切実に胸に迫ってくる。戦争とは生と死を隣り合わせにする凶器であり、正気と狂気の区別を無くす暴力装置なのだ。終始一貫して語られる戦争への悲しみと苦悩が、物悲しい読後感へ誘っている。良書。
読了日:2月26日 著者:ティム・オブライエン
新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)新・現代思想講義 ナショナリズムは悪なのか (NHK出版新書 361)感想
ナショナリズム反対論者たちが展開する持論に対し、その論理展開に不満を抱いたという著者が、反対論者たちへの批判として執筆された本。ナショナリズム反対論者は日本の若者の右傾化、グローバル化に伴う国境の曖昧化、国外からの出稼ぎ労働者に対する排斥運動などを挙げ、ナショナリズムを批判する。だが筆者はこれらの問題について必ずしもナショナリズムに問題があるわけではなく他に問題があること、ナショナリズムの考え方を根本から見直して、反対論者たちの主張を徹底的に批判する。このような思想書は手に取る機会がないため楽しく読めた。
読了日:2月28日 著者:萱野稔人
日本人が知らない韓国売春婦の真実日本人が知らない韓国売春婦の真実感想
日本に韓国から売春婦が次々と流入してるのは、韓国内の売春摘発により売春婦が日本に出稼ぎでやってきてる、と思ってた。しかし状況はもっと複雑で、凄惨な人身売買、監禁し性奴隷として働かされた挙句殺されてしまった女性の話など、事態は深刻で複雑だ。夜の女の経済白書によれば、韓国の売春文化が日本を脅かしてるわけではなく、経済大国と貧困国が隣り合っていればそこに売春社会が形成される。それがいまは韓国売春婦が目立つだけで、将来はこれが中国売春婦、タイ売春婦、そして日本人が海外へ出国して日本売春婦になり得るのだろう。
読了日:2月28日 著者:中村淳彦
魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 limited (前) (このライトノベルがすごい! 文庫)
読了日:3月4日 著者:遠藤浅蜊
魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 limited (後) (このライトノベルがすごい! 文庫)感想
今回もまた血で血を洗う情け容赦のない魔法少女バトルが素晴らしかった!前巻ではキャラクター紹介の色合いが強く「いつもの育成計画らしくないなぁ」と感じたものの、後編を読めばそれが全く杞憂であることを知り大満足のエピソードでありました。このままJOKERSを読み進めるよ!
読了日:3月9日 著者:遠藤浅蜊
魔法少女育成計画 JOKERS (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 JOKERS (このライトノベルがすごい! 文庫)感想
今回も面白かった!血で血を洗う地獄絵図のなかを可憐で美しい魔法少女たちが決死の覚悟と力でもって突き進んでいく。めまぐるしく展開される物語は相変わらずのスピード感だし、随所で散りばめられた伏線がラストで回収されるのも快感の一言。もちろん、まだ明かされきれてない部分もあるけど、それは続刊のなかで少しずつ提示されていくのだろう。早く続きが読みたい!素晴らしい傑作だった!
読了日:3月13日 著者:遠藤浅蜊
逆問題の考え方 結果から原因を探る数学 (ブルーバックス)逆問題の考え方 結果から原因を探る数学 (ブルーバックス)感想
入門書というにはなかなか読み応えのある一冊。自分が知っている逆問題の例は地表の揺れから震源地とマグニチュードを測定する地震計測システムだったが、逆問題の考え方がこれほど様々な科学分野で重要な位置についてることが新鮮な驚き。学生時代を振り返ってみれば、確かに机上の計算は順問題が多く、実験では逆問題に挑むことが多かったように思う。本書を読んでから改めて当時の実験をやってみればまた違う趣があるんだろうなあ。
読了日:3月19日 著者:上村豊
エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学 (ブルーバックス)エントロピーをめぐる冒険 初心者のための統計熱力学 (ブルーバックス)感想
熱量もエネルギーも仕事も温度も圧力も体積も直感的に理解できる。だがエントロピーとはなんだ?定義式は熱量の差分を温度で割ったものがエントロピーの差分に等しい、という。定義式を丸暗記することは簡単だが、その物理的意味を理解し、自在に操れるようになる気がしまるでしなかった。本書はそんな学生時代の悩みに回答の一つを与えてくれる。何より、エントロピーをめぐる科学者たちの歴史部分が非常に面白い。叙情的な表現に鼻白むこともあったが、概ねあの表現はうまく本書の雰囲気に作用していたように思う。素晴らしい一冊。
読了日:3月22日 著者:鈴木炎
超ファミコン超ファミコン感想
昔懐かしのファミコンゲームの数々を取り上げ、当時の情熱や社会状況、そして不条理すぎる難度などなど、様々な要素を多面的に思い返しながら懐古の念に耽られる一冊。ただ、やはり取り扱っているテーマがテーマなだけに読者は非常に選んでしまう(自分のようなアラフォーでない限り楽しめないだろう)し、知らないゲームについて語られてもやはり興ざめしてしまう。よほどのゲーム好きでない限りはなかなか手が伸びにくい一冊かな、というのが正直なところ。
読了日:3月27日 著者:多根清史,阿部広樹,箭本進一
民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)民間軍事会社の内幕 (ちくま文庫 す 19-1)感想
民間軍事会社というと、傭兵を派遣する「死の商人」という偏見があった。しかし実態は、彼らの業務の大半が要人護衛、ロジスティクス、キャンプ施設や食事などの後方支援であり、時には国民からのコンセンサスを得るために思想操作までサービスの一環として提供する企業があるというから驚きだ。東西冷戦時のような単純な構造ではなくなった現代の対テロ戦争では国家を越えた安全保障が必要であり、いかな米国といえど国家をまたいだ計画を立てることは困難である現実を見据えると、このような民間軍事会社が発展してきた歴史に納得ができる。
読了日:3月31日 著者:菅原出
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)感想
理系出身の身としては、ファインマンといえば神にも等しい大物理学者だ。そんな彼が著したエッセイとなればどれほど素晴らしい物理学世界が垣間見られるのかと期待してみれば、それは良くも悪くも盛大に裏切られる。卓越した頭脳と、子供のように無邪気なイタズラ心が日常をキラキラに彩っている。特に金庫破りと手紙の検閲のやり取りは爆笑ものだ!さて下巻ではどんなイタズラを見せてくれるやら。
読了日:4月2日 著者:リチャードP.ファインマン
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)感想
上巻ではファインマンの茶目っ気たっぷりのイタズラがとても面白かったが、下巻ではどちらかというと彼の多才ぶりが前面に出てきた感じ。ただこちらでも共通してるのは、彼がとても人懐っこくて、誰とでもすぐに仲良くなり、面白いものとみなせば自分自身でそれを体験し、研究せねばいられないという好奇心の塊であることを示すエピソードだらけということだ。その好奇心があるからこそ、こんなに素敵な逸話がたくさん生まれたのだなあ、と少し感慨にふけってしまう。
読了日:4月4日 著者:リチャードP.ファインマン
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)感想
今回は我らが第十四駆逐隊そのものの危機。これまでは駆逐隊が危機に瀕する仲間を助ける展開だったが、今回の彼女らは助けられる側として奮闘する。なけなしの装備に、助けられるための戦略と、自分たちだけで逃げられるようにするための最低限の戦術。そこへやってくるのは、これまで彼女たちが助け、手を差し伸べ、互いに切磋琢磨してきた勇猛果敢を体現する駆逐艦の仲間たち。まったく王道をひた走る展開に安心して読める名シリーズだ。最終巻まであと二巻、最後まで付き合わせていただきたい。
読了日:4月4日 著者:築地俊彦
42.195kmの科学  マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)感想
マラソンという過酷な競技に人生をかける選手たちと、そんな彼らの体の秘密に迫った一冊。2000年以降台頭してきて他の追随を許さぬ東アフリカ勢の選手の強さは、地理的環境だけでなく、経済環境や文化的な視点でも日本とは比較にならない重要さを持ってるが故のものなのだろう。フルマラソンで2時間を切るまでにまだもう少しかかるかもしれないが、ぜひそのニュースをこの目で見てみたいものだ。
読了日:4月5日 著者:NHKスペシャル取材班
空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)感想
胸糞が悪くなる。それが本書中盤を読み進めてる時の偽らざる感想だった。しかしそれが終盤になってどうだろう。あれよあれよと風向きが変わり、いっきに爽快な展開を予感させる流れへと変貌していく!スナイダーブレイクは自著の中で、基本的な脚本術として次のような格言を残している。「悪役は徹底的に悪く!」本書に出てくる悪役はまったく救いようがないほどに腐りきっている。だからこそ終盤でのカタルシスはたまらない!早く下巻を読み進めよう。
読了日:4月7日 著者:池井戸潤
空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)感想
これは紛れも無い徹夜小説。ちょっと読み進めるだけのつもりがいつの間にか深夜まで読んでしまった。上巻でひたすら憎たらしく読者の憎悪を煽り続けていたキャラクターたちはみな例外なく相応の懲罰を受け、誠実な行動を取り続けてた人たちはちゃんと報われる。池井戸氏の小説は終わり方がとても清々しい!安心して読めるから大好きさ。
読了日:4月8日 著者:池井戸潤
さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)感想
「16歳でガンで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ。ガンで死ぬ子どもを持つことだ」冒頭で語られる、この悲しすぎる言葉こそ本書を貫くテーマの一つだ。自分が死ぬことで、自分を皆が忘れてしまう、そのことが何より恐ろしいと語る少年と、冒頭の言葉を投げかけてくる少女。対照的な二人が出会い、恋をする。彼らは常に死と隣り合わせの生活を送る中で、少しずつ想いを交換し、ユーモラスに確かめ合う。十代の若者の当たり前の感覚を、瑞々しい感性で描き切った傑作だ。
読了日:4月12日 著者:ジョン・グリーン
日本の歴史 本当は何がすごいのか日本の歴史 本当は何がすごいのか感想
日本の歴史、とりわけ文化史とでも呼ぶべき部分を紹介した本。本書の特徴は日本という国の素晴らしさを読者に説いていくことだが、自分にとっては、少し日本を美化し過ぎかなぁとも思う。縄文土器の文様の意味を深読みし過ぎだし、太平洋戦争突入のきっかけも、アメリカのハルノートの悪どさを強調するだけで、当時の満州陸軍の独走や、海軍の外務省無視の交渉を重ねたことでイギリスからの信頼を失ったことが書かれてない。これはアンフェアだし、この本に書かれたことをそのまま鵜呑みにするのは危険だと感じた。
読了日:4月16日 著者:田中英道
日本人が世界に誇れる33のこと日本人が世界に誇れる33のこと感想
日本に住む元アメリカ人女性から見た、日本人文化の素晴らしさを堂々と語った本。本書で語られている日本人の謙遜の美学や恥の文化、黙して語らずや空気を読むといった一種独特な文化に最初こそ面食らったものの、これこそが日本人の日本人たる素晴らしい文化であり、世界に誇るべきマナー・考え方だと力説されている。ここまで日本人という民族を持ち上げてくれるのは嬉しいが、肝心の日本という国の制度や行政、政府やマスコミの倫理観について一切語られていないところに、暗に含むところがありそうでアンニュイな気分になった。
読了日:4月17日 著者:ルース・ジャーマン・白石
ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44 (文春新書)ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44 (文春新書)感想
相変わらず池上氏の本は読みやすくて面白い。ただ教育に関してのコメントは不可解だった。「歴史は歴史家に言を譲り、政治家は現在でものを語れ」という部分。これは従軍慰安婦と歴史教科書の関連ででてきた言葉だが、安部総理が目指す教育の大方針は戦後レジームからの脱却だ。戦後長らく反日的な教育に毒されてきた教育現場に穴を穿つことが目的だ。これを短絡的に従軍慰安婦問題と絡めてしまうことに著者の良識を疑ってしまう。と批判的に書いたものの、その他の部分は相変わらずの分かりやすさだったのでオススメ。
読了日:4月18日 著者:池上彰
甘城ブリリアントパーク (6) (富士見ファンタジア文庫)甘城ブリリアントパーク (6) (富士見ファンタジア文庫)感想
今回も面白かった!これまでの短編集めいた構成とは異なり、可児江主体の長編構成だが、一巻の時のような胃がキリキリする展開はやっぱり面白くて最高だ!人間関係にも一石が投じられたし、今後の展開が凄く楽しみ。また短編集の巻が続くかもだけど、これはこれで面白いので作者にはぜひ頑張ってもらいたい。
読了日:4月19日 著者:賀東招二
池上彰の「日本の教育」がよくわかる本 (PHP文庫)池上彰の「日本の教育」がよくわかる本 (PHP文庫)感想
聖徳太子は実在しなかったとか、鎌倉幕府の成立年が変わってるなど、そういった「教える内容」の変遷をまとめた本かと思って購入したのだが、実際は教育という制度と体制、歴史とそれらが抱える問題について解説された本だった。なので期待していた内容とはまったく違っていたためあまり興味を持つことができなかったが、それでも日教組のなりたちや教育委員会という組織の形骸化問題について知ることができたのは収穫か。
読了日:4月22日 著者:池上彰
コップクラフト (ガガガ文庫)コップクラフト (ガガガ文庫)感想
再読。大まかなあらすじだけ覚えてはいたものの、5年以上前に一度読んだきりだったため新鮮な気持ちで読み返せた。渋いおっさん&美少女ペアの物語スキーな自分的にはこのシリーズこそ素晴らしい傑作の一つと確信してる。ちなみにこれに並ぶ傑作はスワロウテイル。あちらも考えたら刑事&美少女だったな、そういえば。
読了日:4月24日 著者:賀東招二
コップクラフト2 (ガガガ文庫)コップクラフト2 (ガガガ文庫)感想
再読。やはりこの作品は面白い。これも何年か前に読んだきりだったが、あのカーチェイスシーンの迫力だけは鮮明に覚えてて、再読した今回もまた興奮に当てられてしまった。ティラナが少しずつデレ始めるのも本作からなので、今後の二人の関係をちょっとずつ楽しんでいこう。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
コップクラフト 3 (ガガガ文庫)コップクラフト 3 (ガガガ文庫)感想
再読。大まかなあらすじは覚えてたのに、やはり読後感の悪さはどうしようもない。どうしようもないやつは生きながらえ、本当の意味で救われるべきだった人物はみな死んでしまう。この三巻の結末のせいで本作は暗い話、みたいな印象を強く持ってしまっていたが、さてさて四巻ではどうなることやら。四巻だけは未読なので、これから楽しみ。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
コップクラフト4 DRAGNET MIRAGE RELOADED  (ガガガ文庫)コップクラフト4 DRAGNET MIRAGE RELOADED  (ガガガ文庫)感想
四巻を読むのは初めて。まさか人格の入れ替わり事件で盛り上げるとは。なんか事件の主題が甘ブリっぽくなってきてるのが気になるけど、まあこんな雰囲気のコップクラフトもありかしら?こういう空気は甘ブリに任せて、こちらはもう少しシリアスでハードボイルドな空気で進んで欲しいと感じるのはファンの傲慢か。セシルやトニーのイラストを拝めたのも嬉しかった。後はファンキー牧師のイラスト解禁のみが待ち遠しい。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
日本はこうして世界から信頼される国となった〜わが子へ伝えたい11の歴史日本はこうして世界から信頼される国となった〜わが子へ伝えたい11の歴史感想
これまで何冊か日本自慢史観に基づく本を読んできたけど、本書こそその中でもっとも優れた一冊だった。なぜ日本は戦争に踏み切ったのか、当時の世界情勢はどうなっていたのか、などの解説がとてもわかりやすい。ただ思想的には、本書を読むだけでは戦争観に対する思い上がりをうむおそれがあるため、本書と合わせて池上彰氏の現代史を読むとバランスが良いように思う。池上氏は良く言えば客観的、悪く言うとドライなので、もう少し引いた目で太平洋戦争の事情を解説してくれてる。
読了日:4月28日 著者:佐藤芳直
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)感想
マネーロンダリングと聞いて真っ先に浮かぶのは「麻薬など犯罪で得た収益を如何に当たり障りのない収益であるかのように見せかけるか」という技術だが、実際は「富裕層が自身の資産を税金から逃す」技術という側面もある。筆者によれば両者は目的が違うだけで手段は同じものが使えるようだが、金融技術に疎い自分はそれらをなかなか理解できなかったのが残念。特に本書前半の技術はかなり高度で理解が困難だった。
読了日:5月3日 著者:橘玲
この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義この日本で生きる君が知っておくべき「戦後史の学び方」 池上彰教授の東工大講義感想
池上氏の東工大リベラルアーツ本。今回も大学講義の内容をもとにしているため、内容は問題点や重要なポイントをさらうだけの概要といった趣が強い。日教組関連については日本の教育の大問題という書の方が詳しいし、戦後の問題についても「そうだったのか!」シリーズがわかりやすい。本書はやはりこれらの概要を掴み、興味を持つための入り口として読むのがいいかも。そう割り切ると素晴らしい良書と思う。
読了日:5月7日 著者:池上彰
ソープランドでボーイをしていましたソープランドでボーイをしていました感想
こういう下世話な裏社会的な話が大好きな自分としては、今回の本も大変興味深く読ませていただきました。毎日午前11時から夜の12時半まで働き、その後食事、風呂、洗濯とすれば眠れるのは朝の四時ころ。そして11時になったらまた出勤して……と繰り返す毎日。これで休日は月に3日しかないという激務。名前からは想像できない過酷な勤務内容は読んでて同情してしまう。しかし最後の筆者の「体一つあればこれだけ稼げる仕事があることを知ってほしい」という一言はどこまでもポジティブで元気付けられる。
読了日:5月7日 著者:玉井次郎
宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)宇宙創成〈上〉 (新潮文庫)感想
天体と宇宙への探求に関する歴史を追った良書。古代ギリシャ時代から20世紀初頭に至るまで、人類がどのようにして宇宙の謎に挑んできたかが詳らかにされている。特に好感がもてるのは、ただ正しい答えを導くのではなく、どのようにして人類が間違えてきたのか、その間違えた知識や常識を学者たちはどのようにして是正してきたのかまで詳しく解説されてる点だ。天動説から地動説への決定的なシフトはニュートンによってもたらされたと考えていたのだが、実際はガリレオやケプラーの観測結果が大きく寄与していたのは知らなかった。良書です。
読了日:5月11日 著者:サイモンシン
宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)宇宙創成〈下〉 (新潮文庫)感想
素晴らしい。本書の形容はその一言に尽きる。宇宙はどうやって始まったのかという大難問に対し、核子と電子のスープから始まったとするビッグバンモデルと、宇宙の膨張に伴って新しい核子が生成されるとする定常モデルの熾烈な激論が繰り広げられる。現代に住む私たちはビッグバン説が有力であることを知識として知ってるが、当時の学者たちがどのような理論と観測と証拠でビッグバンモデルを選択したのか、その論争はむしろ戦争と呼ぶに相応しい!本当に面白い科学史本でした。超オススメ。
読了日:5月15日 著者:サイモンシン
僕は小説が書けない僕は小説が書けない感想
清々しい青春小説。まさに白乙一、もとい、中田永一の真骨頂とでも言うべき甘酸っぱさが満載の一冊。読みながらにまにましてくること確実だ。と、ここまで書いてから気づいたのだが、これは中田永一だけでなく中村航との合作という。しかも2人で交互に書き進めたとか。マジっすか。この辺の制作秘話とかもぜひ知りたいなあ。
読了日:5月19日 著者:中村航,中田永一
不変量と対称性―現代数学のこころ (ちくま学芸文庫)不変量と対称性―現代数学のこころ (ちくま学芸文庫)感想
大変興味深い内容が目白押し。15パズルで解ける配置と解けない配置の違いは何か?それをどのように見分けるのか?また合わせ鏡にしたときに出てくる像の法則や、結び目に現れる意外すぎる対称性など、興味は尽きない。だがもっとも新鮮だったのが第7章だ。q分三角形が自分自身の相似形になるのはどのようなqのときか、という問題にモジュライ空間を使って解明するのだが、それが鮮やかでダイナミックで美しく、しかも導かれるのは意外な結論と、本当に驚かせてくれる。数学好きの方にぜひ読んでいただきたい良書。
読了日:5月22日 著者:今井淳,中村博昭,寺尾宏明
知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)知らないと恥をかく世界の大問題 (6) 21世紀の曲がり角。世界はどこへ向かうのか? (角川新書)感想
池上氏の論調が変わってきたことを実感できる一冊。これまでは民主党の失敗や中国、韓国に対する発言は極力セーブされていたか、本書ではかなり公平な立場での発言が見て取れる。おそらくこれまではテレビでの露出が自身の本の売り上げに大きく影響していたためテレビ局の意向に従わざるを得なかったけど、もはやテレビに頼らずとも本の執筆で充分食っていけるようになったために持論を展開できるようになったのかな、と推察。冷静な視点で現代の諸問題を見直せる良書。
読了日:5月23日 著者:
オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder (3) (角川スニーカー文庫 200-3)オイレンシュピーゲル 参 Blue Murder (3) (角川スニーカー文庫 200-3)感想
テスタメントが発売されたので久々に再読。ほとんど内容を忘れていたのでめちゃくちゃ新鮮な気分で読み終えられました。そして確信するのは、やはりこのシリーズは最高に面白いのだという事実。乙女な陽炎にツンデレな涼月、そして過去の記憶を一部取り戻してしまったが故に悲しみの底に暮れる夕霧。三巻は四巻への布石という側面が強い巻でしたが、とにかく聖週間の事件を紐解くためにもスプライト三巻を読まなければ!じかんがこれほど待ち遠しい小説というのは本当に珍しい。最高のエンタメ小説。
読了日:5月25日 著者:冲方丁
スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)スプライトシュピーゲル III いかづちの日と自由の朝 (3) (富士見ファンタジア文庫 136-10)感想
息をのむ展開!思わず叫びたくなる怒涛の展開!再読なので全体のざっくりした物語構成は知ってるはずなのに、それでも数年ぶりに読む本作のストーリーにはただただ感嘆するしかない!ジェットコースターのように次々と戦況が変わり、悪化することはあっても好転することはついぞなく、絶望と失意だけが漂う中で、我らが要撃小隊だけは喜びにも似た絆の強さだけを胸に、最後の飛翔を実行する。その気高さたるや涙が次々と溢れてくるほどだ。本当に凄い小説!まったき良書であることを再確認した!
読了日:5月28日 著者:冲方丁
オイレンシュピーゲル肆  Wag The Dog (角川スニーカー文庫)オイレンシュピーゲル肆 Wag The Dog (角川スニーカー文庫)感想
数年ぶりの再読。言葉にならないこの面白さ。これまでも小隊を襲う危機はいくつもあったけど、今回のそれは特大級。敵は自分たちよりも強大な装備を誇り、援軍はなく、一般市民を守りながら、なぜ守らねばならないのかわからぬものを必死で守らねばならない矛盾と戦う。それでも小隊長であり主人公の涼月は、生来の底なしのガッツと闘志で絶望的な戦いに身を投じる!これぞ極上のエンターテインメント小説だ。
読了日:5月31日 著者:冲方丁
スプライトシュピーゲルIV  テンペスト (富士見ファンタジア文庫)スプライトシュピーゲルIV テンペスト (富士見ファンタジア文庫)感想
オイレン4巻を読んだらこれも読まずにいられないでしょう!実に6年半ぶりの読書だったので話の展開などほとんど忘れており、ほぼ初読みと同じ興奮で読みきりました。特に第一の射殺犯の正体には本当に驚いた!こんな大事な展開を忘れてしまうとは……自分の記憶力のなさに愕然呆然。夢を見るな、しかし夢を捨てるな、抱き続けろ。この小説は、ぜひいまアニメ化されてる冬木市に住む赤髪の正義の味方志望の少年にも読んでいただきたいすな!
読了日:6月6日 著者:冲方丁
はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)感想
それぞれがちょっとずつ一歩前に進んだ気がするけど、やっぱり本質的にはあまり前に進んでない印象。と言ってもそれが悪いわけではなく、こういう日常をずーっとサザエさん時空で続けていけばそこそこの人気シリーズになりそうなのになぁと思いつつ、やはりそういうわけにはいかないことをラストで告げられる。今後の進展としては、次巻で真奥と恵美が戦いへの決意表明をして、その次からラストバトルが始まる、という感じかしら。
読了日:6月13日 著者:和ヶ原聡司
テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)感想
ため息しか出てこない。希望と絶望が入り乱れ、息つく暇もない怒涛の展開!謎が謎を呼び、ひとつの謎が解けたかと思えば新たな謎が読者を困惑させる!本書は全てが見所に溢れすぎてて本当のお気に入りを挙げられないけど、それでもひとつだけ挙げるなら、やはりあのデモシーンだろう。あの歌と、陽気さと、何よりも奇跡のような場面。これこそ涼月にとっての「世界を救う」という言葉に対するひとつの回答を与えた気がしてならない。結末は絶望的だったけどそこはさすが冲方丁、希望を感じさせる終わり方になっている。さあ、これから2巻を読むぞ!
読了日:6月16日 著者:冲方丁
テスタメントシュピーゲル (2) (上) (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル (2) (上) (角川スニーカー文庫)感想
MSS視点でのローデシア事件。謎が謎のままであることは変わらないけど、一部の謎はほんの少しだけここで明かされてますね。それにしてもオーストリアとリヒャルトトラクルの繋がりや、枢機卿を国内へ招いた人物の正体など、本編で明かされた事実に驚愕。しかしやはり特筆すべきは鳳の思い切った積極性でしょうな。その後の彼女の態度が余りにも悲しく切ないけど、そんな彼女を助けるべく冬馬の必死の努力が見てて熱くなってきますな。下巻も楽しみ!
読了日:6月21日 著者:冲方丁
テスタメントシュピーゲル (2) (下) テスタメントシュピーゲル (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル (2) (下) テスタメントシュピーゲル (角川スニーカー文庫)感想
ついに読んだ。過去に読んだオイレンシュピーゲルシリーズの読み返しと合わせて一月以上も費やしてしまったけれども、それだけ丁寧に読み下す価値のある大作だった。カールクラウスやヘルガの覚悟にはとことん驚かされたし、雛の孤独な覚悟や孤軍奮闘する様に心揺さぶられたし、鳳とインフィニティユニットの正体にはただただ悲しみだけが残されるばかりだし、乙の穏やかな覚悟と成長には心強い頼もしさが募るばかり。これほど重厚な物語も、いよいよ終盤。最終巻はぜひ間をおかず発行していただきたい!
読了日:6月28日 著者:冲方丁
池上彰教授の東工大講義 学校では教えない「社会人のための現代史」池上彰教授の東工大講義 学校では教えない「社会人のための現代史」感想
東工大における講義をまとめた池上彰著のシリーズ第三作。発行は2013年なので少しだけ情報が古いのが難点だが、現代の問題点を俯瞰して理解するのであれば充分わかりやすい入門書となっている。ただ、最近こういった国際情勢の解説本は池上彰氏の本ばかり読んでるので、そろそろ氏以外の著作を読まないとなぁ。分かりやすくて良いんだけどね。
読了日:7月1日 著者:池上彰
火星の人 (ハヤカワ文庫SF)火星の人 (ハヤカワ文庫SF)感想
火星に取り残されてしまった一人の宇宙飛行士の生き残りを賭けたサバイバルハードSF小説。気圧は地球の160分の1、夜になればマイナス80度まで気温が下がり、酸素さえ凍りつく火星。厳しいというにはあまりに過酷な環境下においてさえ、主人公はユーモアを忘れず、前向きで、生き残るための方法を常に探し続け、あらゆる困難を乗り越えて行く。素人目に見ればどうあがいても絶望しかないのに、どんな状況であっても絶対に諦めず究極のDIYで解決を図る。絶望的なのに絶望を感じさせない、ユニークでカッコ良い作品。最高のSF小説だ!
読了日:7月8日 著者:アンディ・ウィアー
日本近代史 (ちくま新書)日本近代史 (ちくま新書)感想
ようやく読了。読み終えるのに2週間もかかってしまった。それでも僕が最も知りたかった「なぜ日本は太平洋戦争に突き進んだのか」という疑問にひとつの答えを得られたのは大きい。終盤の政治的大混乱は怖気がするほど凄まじい。右翼的には、太平洋戦争に突入したのは、アメリカのハルノートを原因としており、日本の参戦はアメリカに仕組まれたものだ、という主張は本書の前では虚しく響く。軍部の増長、それを抑えられなかった指導者、四分五裂する政党政治、すべてがめちゃくちゃだ。これは崩壊に向かうべくして向かったのだ、と思いたくもなる。
読了日:7月22日 著者:坂野潤治
ハケンアニメ!ハケンアニメ!感想
噂通りの面白さでありました!お仕事小説として、仕事の酸いも甘いもよく表現されており、クライマックスでは幾度鳥肌が立ったか知れない。みんなが自分の仕事に誇りを持っており、相手の仕事に敬意を持っており、みんなの仕事に信頼をおいている。彼らが仕事をする動機は様々あれど、やっぱり根幹には「楽しそう」があり、「面白いものを作りたい」という衝動があり、でもやっぱり基本的には愛なのだ。愛ある人々によって綴られる、辛くもあるけど誇り高い製作現場であることをも想像させてくれる、素晴らしい小説でありました。オススメ。
読了日:7月29日 著者:辻村深月
舟を編む (光文社文庫)舟を編む (光文社文庫)感想
辞書の編纂に携わる人間たちの悲喜こもごもの人情ドラマ。実を言えば、本書は辞書編纂におけるプロジェクトX的な物語なのかと思っていたのだが、実際は辞書と言葉・言語にかかわる人々が、言葉という当たり前の概念を真正面から考え、どうにも泥臭いほどの人間味を感じさせてくれる素晴らしい群像劇だった。辞書なんて調べ物のときにしか開いたことがないけど、「辞書を読む」ということに挑戦してみようかな、と思わせてくれる素敵な本だった。
読了日:8月3日 著者:三浦しをん
ポアンカレ予想 (新潮文庫)ポアンカレ予想 (新潮文庫)感想
二週間ほどかけてようやく読了。かなり読み応えのある一冊でした。ポアンカレ予想とは、数学ファンであれば言わずと知れた位相幾何学の大予想だが、その地獄のような難易度と悪魔のような魅力により、多くの数学者を虜にしてきた。本書ではそのポアンカレ予想にまつわる数学と人間と社会の歴史を紐解き、一大叙事詩に仕立て上げている。数学ファンであればぜひとも手にとっていただきたい良書。
読了日:8月18日 著者:ドナルオシア
鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)鍵屋甘味処改 天才鍵師と野良猫少女の甘くない日常 (集英社オレンジ文庫)感想
主人公の女の子の野良猫じみた振る舞いがどうにも可愛らしい作品。終盤で怒涛のように家族の絆が前面に押し出されてきたけど、このへんの構成がもうちょいどうにかならなかったかなぁと思いつつ、まあ読み終えてみれば読後感すっきりの素敵な物語でありました。ドラマ化とかしたら面白いかも。キャスト陣が思い浮かばないけど。
読了日:8月25日 著者:梨沙
ジハード 1 猛き十字のアッカ (星海社文庫)ジハード 1 猛き十字のアッカ (星海社文庫)感想
20年ぶりの再読。最初はジャンプノベルに掲載されてたものを読んだのですが、たまたま本屋でリニューアル版が陳列されてるのをみつけ、あまりの懐かしさに全巻大人買いし、1巻目をこのたび読了した次第。エルシードの姫様が相変わらずの暴虐っぷりで安心しましたが、結局20年前は全部読み終える前に続刊の購入をやめてしまったので、今回は終結までしっかり見届けたい。果てさてどうなることやら。
読了日:8月31日 著者:定金伸治
ジハード 2 こぼれゆく者のヤーファ (星海社文庫)ジハード 2 こぼれゆく者のヤーファ (星海社文庫)感想
二巻目を読了。20年前に読んだときにはちゃんとロビン・フッドと記載されてたのに、今回はわざとらしいくらいにその名前を避けてロビン・ロクスリーと表記してるのは、なんか問題でもあったのかしら?まあそんな大人の事情を垣間見つつも、今回はヴァレリーの底知れぬ力と、エルシード姫とアリエノール姫の可愛さが見られて満足。これからどうなることやら。そしてアリエノールがデレるのはいつなのか。もうすぐか?
読了日:9月4日 著者:定金伸治
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫)感想
今回も面白かった!我らが第十四駆逐隊の嚮導艦である陽炎に与えられた任務は、今度は秘書艦!これまで訓練と戦闘に明け暮れてた日々と違い、後方任務である書類仕事に忙殺される。しかしときには重大で過酷な決断も迫られて……なお話。やっぱり本シリーズは最高に面白い。話は王道なれど、王道だからこそ安心して楽しめるし、読書中のカタルシスも半端ない。ラストでは引っ込み思案だった潮の決意も見られて大満足。次回が待ち遠しいけど次が最後か。寂しくなるなあ。
読了日:9月5日 著者:築地俊彦
ジハード 3 氷雪燃え立つアスカロン (星海社文庫)ジハード 3 氷雪燃え立つアスカロン (星海社文庫)感想
やはり最後のアスカロン脱出は鳥肌が立つよね……結末も戦い方もわかってるのに、脱出シーンは本当に痺れました。特にジョフリーの叫びで興奮は最高潮ですわ。「アイヴァンホー様の作戦は完全だった。一分の隙さえありはしなかった。そして俺も失策は起こさなかった!それがなぜ、負ける!なぜこのように弄ばれる!余りにも理不尽だ!人が奴を斃す事は不可能だとでもいうのか!」悪魔の智慧、常敗の名将、主人公ヴァレリー!早く続きを読まないと!
読了日:9月11日 著者:定金伸治,えいひ
ジハード 4 神なき瞳に宿る焔 (星海社文庫)ジハード 4 神なき瞳に宿る焔 (星海社文庫)感想
20年前に挫折したところまでを読了し、ここからまったく未知の物語なのでめっちゃ新鮮な感覚で読み終えた。そのうえで感想を言うなら、ラスカリスのあのシーン、あんな展開であのシーンに繋がるのか……と感慨深い想いにかられることしきり。申し訳ないけど、ちょっと急展開過ぎないかな?と思ってしまうものの、まあこのシーンを削らなかったということは、作者自身このシーンこそ物語全体を貫く何かしらのメッセージなのでしょうか。思うところはすべてを読み終えてから語るとしましょう。
読了日:9月14日 著者:定金伸治
ジハード 5 集結の聖都 (星海社文庫)ジハード 5 集結の聖都 (星海社文庫)感想
色々と物語が動き始めた本巻。アリエノールの執着やアイヴァンホーの自責などが印象的ですけど、唯一、ヴァレリーの奇抜な戦術が描かれなかったのが物足りなかったかな。捕虜の人道的解放がこの後どのような影響を与えるか楽しみ。次巻がいよいよ最終巻だし、期待が高まります。
読了日:9月18日 著者:定金伸治,えいひ
ジハード 6 主よ一握りの憐れみを (星海社文庫)ジハード 6 主よ一握りの憐れみを (星海社文庫)感想
本シリーズを初めて手に取ってから早20年。ようやく全てを読了。途中で読むのをやめてしまったのは自分の意思とはいえ、最終的にどのような結末になったのか気がかりでしたが、ここでそれを目にすることができたことは幸運なことでした。キャラクターの行動基準や、死にゆく者の死のきっかけ、またなぜ死ぬことになったのかなどなど、キャラ描写に拙さが残されているのは作者の初期作品だからでしょうか。大団円とは言えぬラストでしたが、心に爽やかな風を吹き込んでくれるエピローグを読めば、これはこれで良き物語だったと思えてきます。
読了日:9月21日 著者:定金伸治
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/6 号 [外国人観光客の日本の歩き方]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/6 号 [外国人観光客の日本の歩き方]感想
ISISの支配区域が貧困に喘いでいることは知らなかった。支配会社当初こそ、原油生産施設を占拠したことによる収入で潤っていた財務状況も、ロシア経済制裁とドル高に伴う原油安によりその恩恵も今や昔、収入はからっきしとなつてしまったとは。それでも、数少ない収入のほとんどすべてを戦闘員への給与と武器の購入に充てている現状からは、極めて危険なテロ集団であることに変わりはなく、今後も動向が気になる次第。
読了日:9月30日 著者:
蒼き狼 (新潮文庫)蒼き狼 (新潮文庫)感想
チンギスカンの一生を記した大著。驚かされたのは、チンギスカンの征服欲だ。モンゴル高原は少数民族が互いの縄張りの中で小競り合いする程度の小さな地域でしかなかったのに、そこで生まれたチンギスカンは、正に家族親族だけしかいない集落から始まって、最後には東は中国、西はシリアやブルガリア、北はロシアまで版図を広げる。モンゴル統一に留まらず、仇敵中国の征服にも満足せず、イスラム圏や欧州にまで版図を広げる程の征服欲には、理解し難い執念じみた信念すら感じられるほど。それを全て描き切った本書はまさに一大叙事詩。必読。
読了日:10月3日 著者:井上靖
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/13 号 [「模範国家」ドイツの現実]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/13 号 [「模範国家」ドイツの現実]感想
今週はEUの模範的国家、ドイツ特集。その中で気になったのは、ドイツの敗戦処理と日本の戦後処理を単純比較することは早計と断じる記事。これは自分も薄々感じていたことだがうまく言葉にできなかった思いだったため、今回のこの記事出会えたことは幸運だった。この記事を読むためだけでも今回のニューズウィークを購入する価値がある。
読了日:10月7日 著者:
「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)感想
現代の素粒子物理学について非常に簡単でわかりやすく解説してくれてる名著。なぜ重力はかくも弱いのか、単純なその謎についてひたすら研究を重ねてきた物理学者たちの、シンプルで画期的な一つのアイデア。それが「この世界は三次元ではなく五次元以上の空間で形成されている」とする仮説だ。科学というのは、どれだけ素っ頓狂な仮説だったとしても、その仮説で現象を説明できればそれが正しいと受け入れられる面白い社会。そんな中で生き残ってきた仮説の数々はどれも過激でありながら、どこまでもエキサイティングだ。最高の一冊。
読了日:10月9日 著者:村田次郎
世界情死大全―「愛」と「死」と「エロス」の美学 (文春文庫)世界情死大全―「愛」と「死」と「エロス」の美学 (文春文庫)感想
本書で取り上げられているのは「愛憎と死」。歴史上の様々な愛憎劇を実話創作からめて取り上げ、それぞれの時代背景とともに紹介していく。ただその紹介の仕方には一貫性がなく、神話における悲恋の話が出たかと思うと、次の節では異常快楽殺人者ジェフリーダーマーが取り上げられたりするため、頭の切り替えが追いつかず気持ちの悪い思いをした。またエピソードのひとつひとつが数ページしかないため、余韻に浸る間もなく次々と物語が展開するため少し疲れてしまう。世界の様々な愛憎劇の片鱗を味わいたいのであれば読んでみると良いかも。
読了日:10月11日 著者:桐生操
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/20 号 [世界最悪の危機。絶望のシリア]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/20 号 [世界最悪の危機。絶望のシリア]感想
表題にある通り、現在のシリアを取り巻く環境はまさしく絶望。かつての美しい街並みや遺跡などは無残に破壊され、街を横断するだけでも数々の検問を通らねばならないため16時間もかかる。かつてはバスで一本通過するたけだったアッポラは、いまやそんな死と銃弾と絶望だけが漂う地獄の街と化しているという。難民問題にも解決の糸口が見つからぬままロシアが謎の軍事介入まで行い、更に中東情勢は混乱を極めている状況。平和的解決はいつのことか。
読了日:10月14日 著者:
アリストテレス はじめての形而上学 (NHKブックス No.1192)アリストテレス はじめての形而上学 (NHKブックス No.1192)感想
表題にある「はじめての」という言葉は参考にならないので注意が必要。これはあくまで「ある」ということに対し徹底的に問いを重ねていき、それをアリストテレスはどのように捉え、考えていたかを一から考察している本だ。その構成と解説は見事なもので、最初は点・線・面とは何かという問いから始まり、「ある」を考えるためにウーシアをどのようにカテゴライズし解釈するかに至って、そこから魂・生命への問いに繋がり、最後に時間とは何か、と問う構成は非常に分かりやすく面白い。非常に体力のいる読書でありました。
読了日:10月17日 著者:富松保文
昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか (文春新書)昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか (文春新書)感想
戦争という国家壊滅の危機にあってなお省益を最優先で考えた大臣たちの愚鈍さ、そんな愚か者をトップに据えた人事の間抜けさ、危急存亡のときでさえ平時と同じ仕事しかこなさない官僚の危機意識の無さ、事なかれ主義で作戦を進める司令長官の無能さ、好戦的な中堅を抑えることもできぬ優柔不断なトップ、などなど、問題を論えばキリがない。兵器は職人的技術で支えられ、前線は臨機応変で優秀な指揮官が揃っていたにもかかわらず、中枢が無能で国家の危機を他人事に構えていたことが何よりの悲劇だったのだ。こんな悲劇を繰り返してはならない。
読了日:10月20日 著者:半藤一利,秦郁彦,平間洋一,保阪正康,黒野耐,戸高一成,戸部良一,福田和也
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/27 号 [歴史戦争  勝者なき不毛な戦い]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/27 号 [歴史戦争 勝者なき不毛な戦い]感想
特集のひとつは東アジアの歴史戦争。中国が申請した、南京大虐殺の記憶遺産申請をユネスコが受諾したことに対し、日本が拠出金の差し止めを匂わせたことは記憶に新しい。それに対し本書では「中国は南京大虐殺を記憶遺産に登録するなら、数百万人を死に追いやったと公式に認めている文化大革命も記憶遺産に登録すべきだ」と述べでおり、痛快でありました。またパレスチナとイスラエル間の紛争がさらに激化していることも記事で紹介されており、暗澹たる気分にふけることしきり。
読了日:10月22日 著者:
甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)感想
今回はアニメで大活躍していたエレメントリタリオの面々のショートストーリー。原作とアニメでは彼女らの設定に大きな乖離があったはずですが、まあそこは原作者の都合で知らぬ間にアニメ準拠の設定に改変されていたのもご愛嬌。それでもサーラマの受難やミュースの胃が痛くなるような飲み会のエピソードは相変わらずのクオリティで安心して読み切ることができました。やはりこのシリーズは鉄板ですね。次回も楽しみです。
読了日:10月24日 著者:賀東招二
そして、メディアは日本を戦争に導いたそして、メディアは日本を戦争に導いた感想
昭和一桁台の時代、まさに日本にとっては太平洋戦争開戦直前のこの時期、メディアはどのように国民を扇動していったのかに興味があって手に取った。やはり大きな問題はメディアが日露戦争を介して売り上げ至上主義へ走ってしまい、売れるための記事、つまり好戦的な記事しか書かなくなったことか大きいように思う。もちろん国家からの圧力も大きいが、最初の躓きはメディアとしての正義感や矜持を失ってしまったことが大きいように思う。
読了日:10月25日 著者:半藤一利,保阪正康
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/3 号 [国連の限界]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/3 号 [国連の限界]感想
国連の無力さは確かに以前より感じてはいた。国際紛争を解決する国連軍は、多国籍軍によって解決される場合が多いし、国連による非難も当該国に届かないことが多い。それでは国連に意味がないのかといえばそうでもなく、国連から脱退するということは国際社会から孤立することを意味しており、いわば国際社会の社交界のような場所と思えば良いのかもしれない。社交界そのものは何も問題を解決してくれないけど、そこに行かねば社会で孤立するだけなのだ。期待してはならないが、軽んじてもいけない、それがいまの国連なのかもしれない。
読了日:11月2日 著者:
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/10 号 [アメリカvs中国]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/10 号 [アメリカvs中国]感想
日中南シナ海の攻防が特集のテーマ。南シナ海への進出という強烈な野心を隠そうとしない中国と、遅きに失した行動しかとれぬアメリカの思惑。火薬庫とまで表現されてしまうほど非常に緊迫した状況ではあるが、中国もアメリカも経済的に非常に強固に結び付けられた関係なので、戦争という最悪の事態には結びつかないと考えられるが、実際に影響を受けるベトナム、インドネシア、マレーシアあたりが冷静な態度で居られるかが問題の肝になりそう。第一次大戦でもプリンチェプという一青年が皇太子を暗殺したことがきっかけだったしね。
読了日:11月8日 著者:
戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)戦術と指揮―命令の与え方・集団の動かし方 (PHP文庫)感想
戦術というものを基礎から解説し、後半は全てシミューレンション問題にあてられるという斬新な構成がされた本。自分は戦術についてはまったくの素人だし、迫撃砲隊と戦車隊は何が違うのかいまいちピンとこないけど、それでも本書後半のシミューレンション問題は抜群の面白さだ。原則に基づき、敵の動きを予測し、合理的な判断を下す。ときに大胆に、しかし代替案を選択できる余地を確実に残せる行動を選択していく。体力のいる読書だったけど、まったく新しい読書体験をさせてくれた良書でありました。
読了日:11月8日 著者:松村劭
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/17 号 [大統領選に異常あり]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/17 号 [大統領選に異常あり]感想
短い特集ではあったが、難民ビジネスの極悪さはまさしく地獄という他ない。決死の覚悟で何千キロも逃げてくれば、そこで難民収容施設に閉じ込められる。難民認定書が数日で発行されるというので信用していれば、数ヶ月経っても音沙汰なし。実際には難民に支払われる支給金がすべてマフィアに渡っており、彼らは半永久的に劣悪な施設に閉じ込められる。子供は倉庫に監禁され、欧州に逃げ延びるまでに何人もの友人と死に別れ、女性は例外なくレイプされる。地獄そのものだ。
読了日:11月13日 著者:
ホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるかホワット・イフ?:野球のボールを光速で投げたらどうなるか感想
バカバカしい質問に対し、元NASAの技術者が科学と数学と持ち前のユーモアで、ときにあっと驚く、しかし皮肉に満ちた答えを導き出す科学書。雰囲気としては20年ほど前に大流行した空想科学読本のノリに近い。こういう本を読むと科学や数学の面白さを再認識させてくれる。数学や物理学とは、見えないほど小さく、触れないほど熱く、途方もない未来や遠距離にあるものであっても、どんなことがおこるかをある程度の正確さで予言できてしまう学問なのだ。これから進路を考える学生にも、勉学から離れてしまった社会人にもお勧めできる良書。
読了日:11月16日 著者:ランドール・マンロー
いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)いつかパラソルの下で (角川文庫 も 16-5)感想
いつかパラソルの下でを読書中。率直に言って、自分にはこういう本は合わないことがわかった。人の日常生活にこそ人間の本性と真実があると言えば聞こえは良いけど、私にとって本書は、他人の家の家庭事情を覗き見してるような気がしてならず、読んでいる間どうにも居心地の悪い思いが消えなかった。とは言え心理描写や叙情的な表現は見事なものだし、男性の性もそれはそれはよく表現されてるので、こういう本が好きな人は好きかも。
読了日:11月19日 著者:森絵都
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/24 号 [スー・チーは聖人か/フランス・厳戒態勢でも防げなかったパリのテロ]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 11/24 号 [スー・チーは聖人か/フランス・厳戒態勢でも防げなかったパリのテロ]感想
もしかしたら今週は緊急特集としてパリのテロが記載されるかと期待してたのだけど、さすがにそれは無理だった模様。今週の特集は圧倒的な得票差で圧勝し政権交代を実現したアンサンスーチー女史。この事実は確かにミャンマーにとって歴史的転換点のひとつかもしれないが、本書が指摘する通り既存の軍事政権が彼女に権力を大人しく引き渡すわけもなく、これからは「軍の政権運営に口を出せるようになった」程度のものなのだろう。それでも大きな一歩であることに違いはないが、30年前のクーデターが起きないとも言えないことを考えれば油断は禁物。
読了日:11月21日 著者:
エレンディラ (ちくま文庫)エレンディラ (ちくま文庫)感想
どこか陰鬱としながらもひとひらの不思議が世界に花咲く、そんな物語。しかし物語の実にあるのはまさしく人間賛歌そのものであり、か弱く儚いと思っていた少女も図抜けた強さを秘め持ち、歯向かうものすべて破壊せしめんとする男にも意外なほど弱々しい心底が隠されてたりと、人という生き物の真相、本質を抉り出している。主題にもなっているエレンディラの「もう嫌、許してお祖母様」という叫びは、まさしく未成年が大人に搾取される悲劇そのままの表現であり、恐るべき運命、恐るべき悲劇を文字通り体現している。良書。
読了日:11月24日 著者:ガブリエルガルシア=マルケス
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 12/1 号 [テロの時代・世界の転機]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 12/1 号 [テロの時代・世界の転機]感想
当然というべきか、今週はパリのテロ事件特集。先進国が狙われた大規模なテロ事件として911と比較されてるけど、結局あのときから歴史は何も変わってない、という論調があまりに物悲しい。むしろアルカイダに比べ経済力・組織力・支配地域力でさらに危険度を増したISISが相手であり、しかもEUへの難民流入や容易な国境越えが事態をさらに複雑化していることを考えると、暗澹たる気持ちになる。果たしてこの事件が歴史の分水嶺になるか。
読了日:11月28日 著者:
とある飛空士への誓約〈1〉 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約〈1〉 (ガガガ文庫)感想
飛空士シリーズ完結の報を受け、数年前に購入済みの一巻をこのたび読書。さすがは犬村氏、と唸ってしまう構成力に脱帽です。恋歌のときのようなダラダラしたプロローグが延々と続くようなことはなく、すぐさま迎える危機、危機、危機。士官候補生たちにこれでもかと襲い掛かる試練の数々にページを捲る指は一切止まりませんでした。しかしこれでも、まだ物語は始まったばかり。これからの展開にワクワク感満載です。ここからいっぺんに読んでいくよ!
読了日:11月30日 著者:犬村小六
とある飛空士への誓約〈2〉 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約〈2〉 (ガガガ文庫)感想
早速2巻を読了。今回は日常回で、1巻のようなハラハラドキドキする展開はありませんでしたが、それでも互いの意地とプライドを賭けた一騎打ちは鳥肌モノでした。何より各キャラの性格や素性が明かされたのも大きいですね。特にイリアの正体については何と無く察しがついてましたが、ああいうキャラ描写はうまいですね。恋歌のときのような狙いすぎて逆に引くようなキャラ付けではなく、ラノベらしい可愛らしさで微笑ましく読ませていただきました。そしてラストの展開に瞠目しつつ、次巻を楽しみにいたしましょう!
読了日:12月2日 著者:犬村小六
とある飛空士への誓約 3 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約 3 (ガガガ文庫)感想
3巻を読了。今回もメチャクチャ面白かった!何よりもミオの覚悟が切なすぎましたね。悲しく悲壮な覚悟とともに紡がれる彼女の言葉は、読んでいて本当に切なく苦しかったです。あんな場面で終わってしまうなんて続きが気になりすぎる!いやはや、シリーズ完結まで待ってから読書開始して本当に良かった。すぐさま4巻を読み始めるよ!
読了日:12月4日 著者:犬村小六
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 12/8 号 [戦線拡大するテロとの戦い]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 12/8 号 [戦線拡大するテロとの戦い]感想
今回もやはりシリアを中心とした中東情勢が特集のテーマ。第二次大戦以来最悪の難民問題と、パリテロ事件をきっかけに硬直化する受け入れ問題。事実上これ以上の難民を受け入れがたい欧州と、それでも止まらぬ難民流入。シリアを取り巻く問題はアメリカ、イラン、ロシア、トルコ、フランス、サウジアラビア、レバノンなど10カ国以上の国々を巻き込みながら更に複雑化していく。予断を許さない。
読了日:12月4日 著者:
とある飛空士への誓約 4 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約 4 (ガガガ文庫)感想
ついに4巻を読了。士官学校を卒業したエリオドールの7人のその後の姿が描かれた本作。前回スポットライトを当てられてたライナやミオは今回は陰が薄いまま、清顕とイリアとかぐらの熱戦が熱かったですね。カーナシオンの化け物じみた強さに戦慄しつつ、ラストの展開に鳥肌が立ってしまいました。過去作の伏線をここでそう繋げてくるのか!いやはや、シリーズ最終作の名に恥じぬ構成でございますな。次巻も本当に楽しみです。
読了日:12月6日 著者:犬村小六
とある飛空士への誓約 5 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約 5 (ガガガ文庫)感想
王道中の王道とはまさにこのこと。奇をてらった展開などなく、すべて読者の予想通りに展開していくのに、最初から最後までページを捲る手が止まらない!バルタやセシルの覚悟に鳥肌を立たせ、ライナの良心にどこか安心させられつつ、それでも読者の期待どおりに進んでいく物語は痛快この上なし!犬村氏は本当に物語の魅せ方が上手いですね。搦め手でストーリーを紡ぐのではなく、正攻法で、真正面から丁寧に晒け出される物語はとても心地よい体験でした。さあ、すぐにでも6巻を読まねば!
読了日:12月8日 著者:犬村小六
日本版ニューズウィーク 2015年 12/15 号 []日本版ニューズウィーク 2015年 12/15 号 []感想
今週の特集は温暖化。COP21のパリ会議にちなんでのことだけど、地球全体のこととはいえ途上国であるインドの主張「先進国が自らの経済力成長のために払ったツケなのだから、先進国が大きく責任を負うべきだ」が重い。
読了日:12月11日 著者:
とある飛空士への誓約 6 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約 6 (ガガガ文庫)感想
ようやく6巻を読了。途中で明らかなかませ犬臭をぷんぷんさせるキャラが出てきて、さらに主人公の迷いがしつこすぎるほどしつこく、途中で「うじうじ悩んでないでとっとと戦え」と苛立ちさえ抱かされましたが、二人の戦いの結末には満足感すら感じました。次巻から新章へ突入しますが、誓約の7人を迎える運命をぜひ最後まで見届けたいと思います。
読了日:12月17日 著者:犬村小六
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 7 (ファミ通文庫)特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します! 7 (ファミ通文庫)感想
今回もまた、我らが第十四駆逐隊の活躍が眩しい回でした。秘書艦として活躍する陽炎に課せられた次の任務は新人教育。相当な実力を兼ね備えた陽炎たちが教育に力を注ぐ姿は、一巻の頃と比べ大きく成長したなぁとの感慨を抱かされます。そうして迎える最後の場面は、以前からそうなることをほのめかされてきたものの、実際にその姿を見るとやはり涙を禁じえません。彼女らの今後の活躍が見られなくなると思うと本当に惜しいですが、それでも大団円となるラストを届けてくれたことに感謝の気持ちしかありません。素晴らしいシリーズでした!
読了日:12月28日 著者:築地俊彦
とある飛空士への誓約 7 (ガガガ文庫)とある飛空士への誓約 7 (ガガガ文庫)感想
ようやく読了。やはりラストシーンでは鳥肌が立ってしまいますね。機械仕掛けの神たる救援が来た時からこの展開は読めていましたが、それでもあのように計算しつくされた見せ方をされてしまえば興奮を抑えきれません。他シリーズとの邂逅が少しずつ深まりつつある本作、残すところあと2巻ですがどのように物語が収束されるのか本当に楽しみです。
読了日:12月30日 著者:犬村小六

読書メーター
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2015年10月の読書まとめ

2015年10月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:1795ページ
ナイス数:80ナイス

蒼き狼 (新潮文庫)蒼き狼 (新潮文庫)感想
チンギスカンの一生を記した大著。驚かされたのは、チンギスカンの征服欲だ。モンゴル高原は少数民族が互いの縄張りの中で小競り合いする程度の小さな地域でしかなかったのに、そこで生まれたチンギスカンは、正に家族親族だけしかいない集落から始まって、最後には東は中国、西はシリアやブルガリア、北はロシアまで版図を広げる。モンゴル統一に留まらず、仇敵中国の征服にも満足せず、イスラム圏や欧州にまで版図を広げる程の征服欲には、理解し難い執念じみた信念すら感じられるほど。それを全て描き切った本書はまさに一大叙事詩。必読。
読了日:10月3日 著者:井上靖
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/13 号 [「模範国家」ドイツの現実]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/13 号 [「模範国家」ドイツの現実]感想
今週はEUの模範的国家、ドイツ特集。その中で気になったのは、ドイツの敗戦処理と日本の戦後処理を単純比較することは早計と断じる記事。これは自分も薄々感じていたことだがうまく言葉にできなかった思いだったため、今回のこの記事出会えたことは幸運だった。この記事を読むためだけでも今回のニューズウィークを購入する価値がある。
読了日:10月7日 著者:
「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)「余剰次元」と逆二乗則の破れ―我々の世界は本当に三次元か? (ブルーバックス)感想
現代の素粒子物理学について非常に簡単でわかりやすく解説してくれてる名著。なぜ重力はかくも弱いのか、単純なその謎についてひたすら研究を重ねてきた物理学者たちの、シンプルで画期的な一つのアイデア。それが「この世界は三次元ではなく五次元以上の空間で形成されている」とする仮説だ。科学というのは、どれだけ素っ頓狂な仮説だったとしても、その仮説で現象を説明できればそれが正しいと受け入れられる面白い社会。そんな中で生き残ってきた仮説の数々はどれも過激でありながら、どこまでもエキサイティングだ。最高の一冊。
読了日:10月9日 著者:村田次郎
世界情死大全―「愛」と「死」と「エロス」の美学 (文春文庫)世界情死大全―「愛」と「死」と「エロス」の美学 (文春文庫)感想
本書で取り上げられているのは「愛憎と死」。歴史上の様々な愛憎劇を実話創作からめて取り上げ、それぞれの時代背景とともに紹介していく。ただその紹介の仕方には一貫性がなく、神話における悲恋の話が出たかと思うと、次の節では異常快楽殺人者ジェフリーダーマーが取り上げられたりするため、頭の切り替えが追いつかず気持ちの悪い思いをした。またエピソードのひとつひとつが数ページしかないため、余韻に浸る間もなく次々と物語が展開するため少し疲れてしまう。世界の様々な愛憎劇の片鱗を味わいたいのであれば読んでみると良いかも。
読了日:10月11日 著者:桐生操
日本版ニューズウィーク [雑誌]日本版ニューズウィーク [雑誌]感想
表題にある通り、現在のシリアを取り巻く環境はまさしく絶望。かつての美しい街並みや遺跡などは無残に破壊され、街を横断するだけでも数々の検問を通らねばならないため16時間もかかる。かつてはバスで一本通過するたけだったアッポラは、いまやそんな死と銃弾と絶望だけが漂う地獄の街と化しているという。難民問題にも解決の糸口が見つからぬままロシアが謎の軍事介入まで行い、更に中東情勢は混乱を極めている状況。平和的解決はいつのことか。
読了日:10月14日 著者:
アリストテレス はじめての形而上学 (NHKブックス No.1192)アリストテレス はじめての形而上学 (NHKブックス No.1192)感想
表題にある「はじめての」という言葉は参考にならないので注意が必要。これはあくまで「ある」ということに対し徹底的に問いを重ねていき、それをアリストテレスはどのように捉え、考えていたかを一から考察している本だ。その構成と解説は見事なもので、最初は点・線・面とは何かという問いから始まり、「ある」を考えるためにウーシアをどのようにカテゴライズし解釈するかに至って、そこから魂・生命への問いに繋がり、最後に時間とは何か、と問う構成は非常に分かりやすく面白い。非常に体力のいる読書でありました。
読了日:10月17日 著者:富松保文
昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか (文春新書)昭和陸海軍の失敗―彼らはなぜ国家を破滅の淵に追いやったのか (文春新書)感想
戦争という国家壊滅の危機にあってなお省益を最優先で考えた大臣たちの愚鈍さ、そんな愚か者をトップに据えた人事の間抜けさ、危急存亡のときでさえ平時と同じ仕事しかこなさない官僚の危機意識の無さ、事なかれ主義で作戦を進める司令長官の無能さ、好戦的な中堅を抑えることもできぬ優柔不断なトップ、などなど、問題を論えばキリがない。兵器は職人的技術で支えられ、前線は臨機応変で優秀な指揮官が揃っていたにもかかわらず、中枢が無能で国家の危機を他人事に構えていたことが何よりの悲劇だったのだ。こんな悲劇を繰り返してはならない。
読了日:10月20日 著者:半藤一利,秦郁彦,平間洋一,保阪正康,黒野耐,戸高一成,戸部良一,福田和也
Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/27 号 [歴史戦争  勝者なき不毛な戦い]Newsweek (ニューズウィーク日本版) 2015年 10/27 号 [歴史戦争 勝者なき不毛な戦い]感想
特集のひとつは東アジアの歴史戦争。中国が申請した、南京大虐殺の記憶遺産申請をユネスコが受諾したことに対し、日本が拠出金の差し止めを匂わせたことは記憶に新しい。それに対し本書では「中国は南京大虐殺を記憶遺産に登録するなら、数百万人を死に追いやったと公式に認めている文化大革命も記憶遺産に登録すべきだ」と述べでおり、痛快でありました。またパレスチナとイスラエル間の紛争がさらに激化していることも記事で紹介されており、暗澹たる気分にふけることしきり。
読了日:10月22日 著者:
甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)甘城ブリリアントパーク (7) (ファンタジア文庫)感想
今回はアニメで大活躍していたエレメントリタリオの面々のショートストーリー。原作とアニメでは彼女らの設定に大きな乖離があったはずですが、まあそこは原作者の都合で知らぬ間にアニメ準拠の設定に改変されていたのもご愛嬌。それでもサーラマの受難やミュースの胃が痛くなるような飲み会のエピソードは相変わらずのクオリティで安心して読み切ることができました。やはりこのシリーズは鉄板ですね。次回も楽しみです。
読了日:10月24日 著者:賀東招二
そして、メディアは日本を戦争に導いたそして、メディアは日本を戦争に導いた感想
昭和一桁台の時代、まさに日本にとっては太平洋戦争開戦直前のこの時期、メディアはどのように国民を扇動していったのかに興味があって手に取った。やはり大きな問題はメディアが日露戦争を介して売り上げ至上主義へ走ってしまい、売れるための記事、つまり好戦的な記事しか書かなくなったことか大きいように思う。もちろん国家からの圧力も大きいが、最初の躓きはメディアとしての正義感や矜持を失ってしまったことが大きいように思う。
読了日:10月25日 著者:半藤一利,保阪正康

読書メーター

2015年9月に読んだ本まとめ

2015年9月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2221ページ
ナイス数:66ナイス

ジハード 2 こぼれゆく者のヤーファ (星海社文庫)ジハード 2 こぼれゆく者のヤーファ (星海社文庫)感想
二巻目を読了。20年前に読んだときにはちゃんとロビン・フッドと記載されてたのに、今回はわざとらしいくらいにその名前を避けてロビン・ロクスリーと表記してるのは、なんか問題でもあったのかしら?まあそんな大人の事情を垣間見つつも、今回はヴァレリーの底知れぬ力と、エルシード姫とアリエノール姫の可愛さが見られて満足。これからどうなることやら。そしてアリエノールがデレるのはいつなのか。もうすぐか?
読了日:9月4日 著者:定金伸治
艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫)艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!6 (ファミ通文庫)感想
今回も面白かった!我らが第十四駆逐隊の嚮導艦である陽炎に与えられた任務は、今度は秘書艦!これまで訓練と戦闘に明け暮れてた日々と違い、後方任務である書類仕事に忙殺される。しかしときには重大で過酷な決断も迫られて……なお話。やっぱり本シリーズは最高に面白い。話は王道なれど、王道だからこそ安心して楽しめるし、読書中のカタルシスも半端ない。ラストでは引っ込み思案だった潮の決意も見られて大満足。次回が待ち遠しいけど次が最後か。寂しくなるなあ。
読了日:9月5日 著者:築地俊彦
ジハード 3 氷雪燃え立つアスカロン (星海社文庫)ジハード 3 氷雪燃え立つアスカロン (星海社文庫)感想
やはり最後のアスカロン脱出は鳥肌が立つよね……結末も戦い方もわかってるのに、脱出シーンは本当に痺れました。特にジョフリーの叫びで興奮は最高潮ですわ。「アイヴァンホー様の作戦は完全だった。一分の隙さえありはしなかった。そして俺も失策は起こさなかった!それがなぜ、負ける!なぜこのように弄ばれる!余りにも理不尽だ!人が奴を斃す事は不可能だとでもいうのか!」悪魔の智慧、常敗の名将、主人公ヴァレリー!早く続きを読まないと!
読了日:9月11日 著者:定金伸治,えいひ
ジハード 4 神なき瞳に宿る焔 (星海社文庫)ジハード 4 神なき瞳に宿る焔 (星海社文庫)感想
20年前に挫折したところまでを読了し、ここからまったく未知の物語なのでめっちゃ新鮮な感覚で読み終えた。そのうえで感想を言うなら、ラスカリスのあのシーン、あんな展開であのシーンに繋がるのか……と感慨深い想いにかられることしきり。申し訳ないけど、ちょっと急展開過ぎないかな?と思ってしまうものの、まあこのシーンを削らなかったということは、作者自身このシーンこそ物語全体を貫く何かしらのメッセージなのでしょうか。思うところはすべてを読み終えてから語るとしましょう。
読了日:9月14日 著者:定金伸治
ジハード 5 集結の聖都 (星海社文庫)ジハード 5 集結の聖都 (星海社文庫)感想
色々と物語が動き始めた本巻。アリエノールの執着やアイヴァンホーの自責などが印象的ですけど、唯一、ヴァレリーの奇抜な戦術が描かれなかったのが物足りなかったかな。捕虜の人道的解放がこの後どのような影響を与えるか楽しみ。次巻がいよいよ最終巻だし、期待が高まります。
読了日:9月18日 著者:定金伸治,えいひ
ジハード 6 主よ一握りの憐れみを (星海社文庫)ジハード 6 主よ一握りの憐れみを (星海社文庫)感想
本シリーズを初めて手に取ってから早20年。ようやく全てを読了。途中で読むのをやめてしまったのは自分の意思とはいえ、最終的にどのような結末になったのか気がかりでしたが、ここでそれを目にすることができたことは幸運なことでした。キャラクターの行動基準や、死にゆく者の死のきっかけ、またなぜ死ぬことになったのかなどなど、キャラ描写に拙さが残されているのは作者の初期作品だからでしょうか。大団円とは言えぬラストでしたが、心に爽やかな風を吹き込んでくれるエピローグを読めば、これはこれで良き物語だったと思えてきます。
読了日:9月21日 著者:定金伸治
日本版ニューズウィーク [雑誌]日本版ニューズウィーク [雑誌]感想
ISISの支配区域が貧困に喘いでいることは知らなかった。支配会社当初こそ、原油生産施設を占拠したことによる収入で潤っていた財務状況も、ロシア経済制裁とドル高に伴う原油安によりその恩恵も今や昔、収入はからっきしとなつてしまったとは。それでも、数少ない収入のほとんどすべてを戦闘員への給与と武器の購入に充てている現状からは、極めて危険なテロ集団であることに変わりはなく、今後も動向が気になる次第。
読了日:9月30日 著者:

読書メーター

C89申し込みました

はい、というわけで缶なんですけれどもね。
夏コミではお疲れ様でした。
またお越しくださいました方々も、本当にありがとうございました!

でー次回の冬コミC89ですが、今度は一航戦(赤城と加賀)小説で申し込んでいます。
受かれば彼女らがひどい目にあう小説をお届けできると思いますのでご期待ください。
あ、ひどい目と言っても全年齢向けですよ念のため。
エロ同人に毒されてるとこの辺誤解しがちだよね。

C89カット

ではでは、よろしくお願いします!

C88 新刊のお知らせ

はい、お久しぶりです。缶です。生きてます。
というわけで今年の夏コミにもサークル参加をさせていただけることになりました。
スペースは

 8月14日(金) 東地区 "F" ブロック 35a

でごぜーます。どうぞお立ち寄りを!
でー当日の新刊です。

C88表紙サンプル


ご覧のとおり、艦これの雪風と天津風の小説です。
サンプルはpixivにアップロードしてますので、どうぞそちらからご覧くださいませ〜。

「この桜の咲く頃に」/「缶」のシリーズ [pixiv]

ではでは、どうぞ当日はお立ち寄りくださいませー!

2015年6月の読書履歴

なんか先月はライトノベルしか読んでないなぁ。

2015年6月の読書メーター
読んだ本の数:5冊
読んだページ数:2493ページ
ナイス数:78ナイス

スプライトシュピーゲルIV  テンペスト (富士見ファンタジア文庫)スプライトシュピーゲルIV テンペスト (富士見ファンタジア文庫)感想
オイレン4巻を読んだらこれも読まずにいられないでしょう!実に6年半ぶりの読書だったので話の展開などほとんど忘れており、ほぼ初読みと同じ興奮で読みきりました。特に第一の射殺犯の正体には本当に驚いた!こんな大事な展開を忘れてしまうとは……自分の記憶力のなさに愕然呆然。夢を見るな、しかし夢を捨てるな、抱き続けろ。この小説は、ぜひいまアニメ化されてる冬木市に住む赤髪の正義の味方志望の少年にも読んでいただきたいすな!
読了日:6月6日 著者:冲方丁
はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)はたらく魔王さま! (13) (電撃文庫)感想
それぞれがちょっとずつ一歩前に進んだ気がするけど、やっぱり本質的にはあまり前に進んでない印象。と言ってもそれが悪いわけではなく、こういう日常をずーっとサザエさん時空で続けていけばそこそこの人気シリーズになりそうなのになぁと思いつつ、やはりそういうわけにはいかないことをラストで告げられる。今後の進展としては、次巻で真奥と恵美が戦いへの決意表明をして、その次からラストバトルが始まる、という感じかしら。
読了日:6月13日 著者:和ヶ原聡司
テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル 1 (角川スニーカー文庫)感想
ため息しか出てこない。希望と絶望が入り乱れ、息つく暇もない怒涛の展開!謎が謎を呼び、ひとつの謎が解けたかと思えば新たな謎が読者を困惑させる!本書は全てが見所に溢れすぎてて本当のお気に入りを挙げられないけど、それでもひとつだけ挙げるなら、やはりあのデモシーンだろう。あの歌と、陽気さと、何よりも奇跡のような場面。これこそ涼月にとっての「世界を救う」という言葉に対するひとつの回答を与えた気がしてならない。結末は絶望的だったけどそこはさすが冲方丁、希望を感じさせる終わり方になっている。さあ、これから2巻を読むぞ!
読了日:6月16日 著者:冲方丁
テスタメントシュピーゲル (2) (上) (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル (2) (上) (角川スニーカー文庫)感想
MSS視点でのローデシア事件。謎が謎のままであることは変わらないけど、一部の謎はほんの少しだけここで明かされてますね。それにしてもオーストリアとリヒャルトトラクルの繋がりや、枢機卿を国内へ招いた人物の正体など、本編で明かされた事実に驚愕。しかしやはり特筆すべきは鳳の思い切った積極性でしょうな。その後の彼女の態度が余りにも悲しく切ないけど、そんな彼女を助けるべく冬馬の必死の努力が見てて熱くなってきますな。下巻も楽しみ!
読了日:6月21日 著者:冲方丁
テスタメントシュピーゲル (2) (下) テスタメントシュピーゲル (角川スニーカー文庫)テスタメントシュピーゲル (2) (下) テスタメントシュピーゲル (角川スニーカー文庫)感想
ついに読んだ。過去に読んだオイレンシュピーゲルシリーズの読み返しと合わせて一月以上も費やしてしまったけれども、それだけ丁寧に読み下す価値のある大作だった。カールクラウスやヘルガの覚悟にはとことん驚かされたし、雛の孤独な覚悟や孤軍奮闘する様に心揺さぶられたし、鳳とインフィニティユニットの正体にはただただ悲しみだけが残されるばかりだし、乙の穏やかな覚悟と成長には心強い頼もしさが募るばかり。これほど重厚な物語も、いよいよ終盤。最終巻はぜひ間をおかず発行していただきたい!
読了日:6月28日 著者:冲方丁

読書メーター

2015年4月の読書まとめ

2015年4月の読書メーター
読んだ本の数:17冊
読んだページ数:5114ページ
ナイス数:108ナイス

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)感想
理系出身の身としては、ファインマンといえば神にも等しい大物理学者だ。そんな彼が著したエッセイとなればどれほど素晴らしい物理学世界が垣間見られるのかと期待してみれば、それは良くも悪くも盛大に裏切られる。卓越した頭脳と、子供のように無邪気なイタズラ心が日常をキラキラに彩っている。特に金庫破りと手紙の検閲のやり取りは爆笑ものだ!さて下巻ではどんなイタズラを見せてくれるやら。
読了日:4月2日 著者:リチャードP.ファインマン
ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)ご冗談でしょう、ファインマンさん〈下〉 (岩波現代文庫)感想
上巻ではファインマンの茶目っ気たっぷりのイタズラがとても面白かったが、下巻ではどちらかというと彼の多才ぶりが前面に出てきた感じ。ただこちらでも共通してるのは、彼がとても人懐っこくて、誰とでもすぐに仲良くなり、面白いものとみなせば自分自身でそれを体験し、研究せねばいられないという好奇心の塊であることを示すエピソードだらけということだ。その好奇心があるからこそ、こんなに素敵な逸話がたくさん生まれたのだなあ、と少し感慨にふけってしまう。
読了日:4月4日 著者:リチャードP.ファインマン
特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)特装版 艦隊これくしょん -艦これ- 陽炎、抜錨します!5 (ファミ通文庫)感想
今回は我らが第十四駆逐隊そのものの危機。これまでは駆逐隊が危機に瀕する仲間を助ける展開だったが、今回の彼女らは助けられる側として奮闘する。なけなしの装備に、助けられるための戦略と、自分たちだけで逃げられるようにするための最低限の戦術。そこへやってくるのは、これまで彼女たちが助け、手を差し伸べ、互いに切磋琢磨してきた勇猛果敢を体現する駆逐艦の仲間たち。まったく王道をひた走る展開に安心して読める名シリーズだ。最終巻まであと二巻、最後まで付き合わせていただきたい。
読了日:4月4日 著者:築地俊彦
42.195kmの科学  マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)42.195kmの科学 マラソン「つま先着地」vs「かかと着地」 (角川oneテーマ21)感想
マラソンという過酷な競技に人生をかける選手たちと、そんな彼らの体の秘密に迫った一冊。2000年以降台頭してきて他の追随を許さぬ東アフリカ勢の選手の強さは、地理的環境だけでなく、経済環境や文化的な視点でも日本とは比較にならない重要さを持ってるが故のものなのだろう。フルマラソンで2時間を切るまでにまだもう少しかかるかもしれないが、ぜひそのニュースをこの目で見てみたいものだ。
読了日:4月5日 著者:NHKスペシャル取材班
空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(上) (講談社文庫)感想
胸糞が悪くなる。それが本書中盤を読み進めてる時の偽らざる感想だった。しかしそれが終盤になってどうだろう。あれよあれよと風向きが変わり、いっきに爽快な展開を予感させる流れへと変貌していく!スナイダーブレイクは自著の中で、基本的な脚本術として次のような格言を残している。「悪役は徹底的に悪く!」本書に出てくる悪役はまったく救いようがないほどに腐りきっている。だからこそ終盤でのカタルシスはたまらない!早く下巻を読み進めよう。
読了日:4月7日 著者:池井戸潤
空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)空飛ぶタイヤ(下) (講談社文庫)感想
これは紛れも無い徹夜小説。ちょっと読み進めるだけのつもりがいつの間にか深夜まで読んでしまった。上巻でひたすら憎たらしく読者の憎悪を煽り続けていたキャラクターたちはみな例外なく相応の懲罰を受け、誠実な行動を取り続けてた人たちはちゃんと報われる。池井戸氏の小説は終わり方がとても清々しい!安心して読めるから大好きさ。
読了日:4月8日 著者:池井戸潤
さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)さよならを待つふたりのために (STAMP BOOKS)感想
「16歳でガンで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ。ガンで死ぬ子どもを持つことだ」冒頭で語られる、この悲しすぎる言葉こそ本書を貫くテーマの一つだ。自分が死ぬことで、自分を皆が忘れてしまう、そのことが何より恐ろしいと語る少年と、冒頭の言葉を投げかけてくる少女。対照的な二人が出会い、恋をする。彼らは常に死と隣り合わせの生活を送る中で、少しずつ想いを交換し、ユーモラスに確かめ合う。十代の若者の当たり前の感覚を、瑞々しい感性で描き切った傑作だ。
読了日:4月12日 著者:ジョン・グリーン
日本の歴史 本当は何がすごいのか日本の歴史 本当は何がすごいのか感想
日本の歴史、とりわけ文化史とでも呼ぶべき部分を紹介した本。本書の特徴は日本という国の素晴らしさを読者に説いていくことだが、自分にとっては、少し日本を美化し過ぎかなぁとも思う。縄文土器の文様の意味を深読みし過ぎだし、太平洋戦争突入のきっかけも、アメリカのハルノートの悪どさを強調するだけで、当時の満州陸軍の独走や、海軍の外務省無視の交渉を重ねたことでイギリスからの信頼を失ったことが書かれてない。これはアンフェアだし、この本に書かれたことをそのまま鵜呑みにするのは危険だと感じた。
読了日:4月16日 著者:田中英道
日本人が世界に誇れる33のこと日本人が世界に誇れる33のこと感想
日本に住む元アメリカ人女性から見た、日本人文化の素晴らしさを堂々と語った本。本書で語られている日本人の謙遜の美学や恥の文化、黙して語らずや空気を読むといった一種独特な文化に最初こそ面食らったものの、これこそが日本人の日本人たる素晴らしい文化であり、世界に誇るべきマナー・考え方だと力説されている。ここまで日本人という民族を持ち上げてくれるのは嬉しいが、肝心の日本という国の制度や行政、政府やマスコミの倫理観について一切語られていないところに、暗に含むところがありそうでアンニュイな気分になった。
読了日:4月17日 著者:ルース・ジャーマン・白石
ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44 (文春新書)ニッポンの大問題 池上流・情報分析のヒント44 (文春新書)感想
相変わらず池上氏の本は読みやすくて面白い。ただ教育に関してのコメントは不可解だった。「歴史は歴史家に言を譲り、政治家は現在でものを語れ」という部分。これは従軍慰安婦と歴史教科書の関連ででてきた言葉だが、安部総理が目指す教育の大方針は戦後レジームからの脱却だ。戦後長らく反日的な教育に毒されてきた教育現場に穴を穿つことが目的だ。これを短絡的に従軍慰安婦問題と絡めてしまうことに著者の良識を疑ってしまう。と批判的に書いたものの、その他の部分は相変わらずの分かりやすさだったのでオススメ。
読了日:4月18日 著者:池上彰
甘城ブリリアントパーク (6) (富士見ファンタジア文庫)甘城ブリリアントパーク (6) (富士見ファンタジア文庫)感想
今回も面白かった!これまでの短編集めいた構成とは異なり、可児江主体の長編構成だが、一巻の時のような胃がキリキリする展開はやっぱり面白くて最高だ!人間関係にも一石が投じられたし、今後の展開が凄く楽しみ。また短編集の巻が続くかもだけど、これはこれで面白いので作者にはぜひ頑張ってもらいたい。
読了日:4月19日 著者:賀東招二
池上彰の「日本の教育」がよくわかる本 (PHP文庫)池上彰の「日本の教育」がよくわかる本 (PHP文庫)感想
聖徳太子は実在しなかったとか、鎌倉幕府の成立年が変わってるなど、そういった「教える内容」の変遷をまとめた本かと思って購入したのだが、実際は教育という制度と体制、歴史とそれらが抱える問題について解説された本だった。なので期待していた内容とはまったく違っていたためあまり興味を持つことができなかったが、それでも日教組のなりたちや教育委員会という組織の形骸化問題について知ることができたのは収穫か。
読了日:4月22日 著者:池上彰
コップクラフト (ガガガ文庫)コップクラフト (ガガガ文庫)感想
再読。大まかなあらすじだけ覚えてはいたものの、5年以上前に一度読んだきりだったため新鮮な気持ちで読み返せた。渋いおっさん&美少女ペアの物語スキーな自分的にはこのシリーズこそ素晴らしい傑作の一つと確信してる。ちなみにこれに並ぶ傑作はスワロウテイル。あちらも考えたら刑事&美少女だったな、そういえば。
読了日:4月24日 著者:賀東招二
コップクラフト2 (ガガガ文庫)コップクラフト2 (ガガガ文庫)感想
再読。やはりこの作品は面白い。これも何年か前に読んだきりだったが、あのカーチェイスシーンの迫力だけは鮮明に覚えてて、再読した今回もまた興奮に当てられてしまった。ティラナが少しずつデレ始めるのも本作からなので、今後の二人の関係をちょっとずつ楽しんでいこう。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
コップクラフト 3 (ガガガ文庫)コップクラフト 3 (ガガガ文庫)感想
再読。大まかなあらすじは覚えてたのに、やはり読後感の悪さはどうしようもない。どうしようもないやつは生きながらえ、本当の意味で救われるべきだった人物はみな死んでしまう。この三巻の結末のせいで本作は暗い話、みたいな印象を強く持ってしまっていたが、さてさて四巻ではどうなることやら。四巻だけは未読なので、これから楽しみ。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
コップクラフト 4 (ガガガ文庫)コップクラフト 4 (ガガガ文庫)感想
四巻を読むのは初めて。まさか人格の入れ替わり事件で盛り上げるとは。なんか事件の主題が甘ブリっぽくなってきてるのが気になるけど、まあこんな雰囲気のコップクラフトもありかしら?こういう空気は甘ブリに任せて、こちらはもう少しシリアスでハードボイルドな空気で進んで欲しいと感じるのはファンの傲慢か。セシルやトニーのイラストを拝めたのも嬉しかった。後はファンキー牧師のイラスト解禁のみが待ち遠しい。
読了日:4月26日 著者:賀東招二
日本はこうして世界から信頼される国となった〜わが子へ伝えたい11の歴史日本はこうして世界から信頼される国となった〜わが子へ伝えたい11の歴史感想
これまで何冊か日本自慢史観に基づく本を読んできたけど、本書こそその中でもっとも優れた一冊だった。なぜ日本は戦争に踏み切ったのか、当時の世界情勢はどうなっていたのか、などの解説がとてもわかりやすい。ただ思想的には、本書を読むだけでは戦争観に対する思い上がりをうむおそれがあるため、本書と合わせて池上彰氏の現代史を読むとバランスが良いように思う。池上氏は良く言えば客観的、悪く言うとドライなので、もう少し引いた目で太平洋戦争の事情を解説してくれてる。
読了日:4月28日 著者:佐藤芳直

読書メーター

夏コミ(C86)お疲れ様でした

というわけで当日にお越し下さいました皆様、ありがとうございました。
おかげさまで、完売とはならなかったものの、例年に比べ頒布数が多く懐かしい友人にも敢えて充実したコミケでした。
翌日に38.6度の高熱さえ出なければ。

まぁ何はともあれ無事に終えられたのでとにかく幸運だったかなーと。

ちなみに冬コミも艦これで申込みをさせていただきます。
今度は天龍田だ!


■現代日本の児童福祉を抉る書籍3冊
  

総評:★★★★★(5点)

事実は小説より奇なり。
まさか現代の日本において、この飽食と呼ばれる時代に於いて、今夜の寝床を求めてさまよい、明日の食事すらままならない生活を送る少年少女がこれほど多くいようとは。

地獄のような家族や施設から逃げ出した少年たち。
現代日本に於いて未成年の少年少女は保護者による庇護を受けることを大前提として成り立っている。
故にその保護者から逃げざるを得なかった少年たちは、その瞬間からあらゆる福祉、庇護、そして法からこぼれ落ちてしまう。
結果、彼らが自分たちの力だけで生きていかねばならなくなったとき、もはやまっとうな手段で生きることなどできない。
法の下で生きることができなくなれば、法を犯して生きるしかない。
売れる物は売り、奪えるものから奪う。
そうして少女は自身の体という商品を売り、少年は金品を奪って生活資金を稼いでいく。

本書で取り上げられる少年少女たちの心の叫び。
愛されたことがないから愛し方がわからない。
ある少年は平気で女をぶん殴るのに、男友達のためには何時間でも土下座を貫き通す。
ある少女は自分の父親ほど年の離れた男性に抱かれるときに、得も言われぬ心の充実を感じてしまう。

ねえおじさん、もっとギュッとしてよ



本書の帯にも記されたこの台詞からは、愛されない悲しさ、寂しさ、父親を知らぬ後ろめたさなどの複雑な感情がぐるぐると渦巻いた結果生まれた、あまりに悲しくねじ曲げられた父親への愛を感じ取れてしまう。

このような悲しすぎる現状を前に、筆者は言う。

彼女たちは、生まれつきの被害者だ。性的に、経済的に搾取され、路上に彷徨う彼女らを救う方法はどこにあるのか。いくら考えても、答えはひとつしか出て来ない。児童福祉の充実だと僕は思う。




そう、福祉だ。
老い先短い老人への福祉にばかり注力せず、その老人を支える若者をこそ支える福祉がなければこれからの日本はありえない。
ましてや、何のために生まれてきたのか疑わずにいられないほど壮絶な体験をしてしまった少年少女を救うのに、理由が必要なのか。
彼ら、彼女らを救うのに必要なのは規制でも条例でも取り締まり強化でもない。
何かを禁止するのではなく、彼らを救うための施策こそが必要とされるものであり、そのための福祉の充実こそがもっとも求められるものなのだ。


そうすれば救われる若者は沢山出てくるに違いない。
なぜなら彼らは生きている。どうしようもなく、生きようとしている。
壮絶で、救いようがなく、血と暴力と裏切りの世界のなかで生きざるを得なかった少年たちの生きる事への執着は、むしろ逞しく輝いて見える。
あまりにも生きてそこにいる少年たちの、はちきれんばかりの生への渇望は次の一言に集約されている。

ファック、大人代表。俺たちは生き抜いてやる!




思わず手を差し伸べたくなるような境遇にあって、それでも差し伸べる手を払いのけて自らの力で生きようとする少年少女たちのパワーに圧倒されながら、それでも社会のために自分が何かせねばならないと使命感を抱かせてくれる、そんな名著でありました。
素晴らしい本です。おすすめ。


■面白ツイート


かわいい(断言)




つよい(確信)




熊野ォォオオッッツ!




もはやセンスとアイデアの勝利ですな。




個人的にはヘソの窪みが最高のフェチポイント。




うちの鎮守府にもこんな港湾棲姫と北方ちゃんが来ませんかね。




ショタにはご褒美。

その力で、手を血に染めよ「魔法少女育成計画」

魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)魔法少女育成計画 (このライトノベルがすごい! 文庫)
(2012/06/08)
遠藤 浅蜊

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魔法少女育成計画を読んだ。面白かった。

圧倒的である。
これ意外に言葉がない。それほどまでにこの作品のもつエンターテインメント性は抜群だった。

何気なく遊んでいたオンラインゲーム「魔法少女育成計画」。
このゲームを遊ぶもののなかから1万人に1人の割合で本物の魔法少女になれるという
いかにもな都市伝説がまことしやかに囁かれ、そしてそれが現実の物であることを知った16名のプレイヤー。
彼らは老若男女問わずいずれも見目麗しい「魔法少女」へと変身し、
常人のそれを遙かに凌駕した"力"を世のため人のために使っていく。

そうして現実の世界でも「魔法少女」としての力を使って世の中を押下していたプレイヤーに、
ある日、管理者から絶望的な宣告が為される。

「多くなりすぎた魔法少女を減らすため競争をさせる」と。
ではその競争の敗北者を迎える結末とは何か?
すなわち、死である。

ただ魔法少女になれたことを喜び、人のために使い続けてきた少女たちに突如降りかかってきた、
圧倒的なまでの過酷な試練。
その試練のさなかで一人、また一人と魔法少女は斃れ、
魔法という恐るべき能力を持った魔法少女──いや、魔人と呼ぶべきか──による血で血を洗う
無慈悲で凄惨極まりない生存競争が始まるのだ。

その競争と、競争が生み出した苛烈な結末に、僕たち読者はただひたすら流されるだけとなる。
欲望と渇望、信頼と友情、愛情と結束、羨望と嫌悪、信頼と裏切り、嘆きと絶望、そして生命と死滅。
あらゆる感情をひとしなみに吹き飛ばしながら魔法少女たちは戦う。
ある者は拳を振るい、ある者は刃を放ち、そしてある者は凶弾に斃れる。
そして迎える結末には、言いようのない喪失感だけが読者の胸に去来することだろう。

電車で乗り過ごしかけること2回、睡眠時間を削ること二晩、あっという間に読み終えてしまった。
これは間違いなく中毒になる小説だ。
もしお手に取った方は、ぜひ読み始める時間にだけはご注意を。
一度ページをめくり始めたら最後、その手を止めるタイミングは一切見つからなくなるので。

合唱を通じて成長する青春群像劇「くちびるに歌を」

くちびるに歌をくちびるに歌を
(2011/11/24)
中田 永一

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中田永一の「くちびるに歌を」を読んだ。面白かった。

これは九州地方の離島に住む中学生たちが合唱部を通じて成長するという青春群像劇だ。
この物語に登場する少年少女たちはいずれも等身大の子供たちで、
それぞれに悩みを抱え、葛藤を抱え、自身のなかである種の諦めにも似た達観すら抱いている少年もいる。

そんな彼らが作中でしたためるのは、15年後の自分に宛てた手紙だ。
作中では各登場人物たちのモノローグと共に、手紙の片鱗が明かされていく。
彼らは何を思い、何を憂い、そして何を決意していったのか。
中学生でありながら、いや、中学生であるからこそ、
"進路"という初めて経験する人生の岐路に懊悩する。
島の中の高校に通う者、島を離れる者、東京へ行くと野心を燃やす者、
そして島から一歩も出る事は無いだろうと透き通るような諦観で己の将来を見据える者。

彼らはそれぞれの想いを胸に秘めて、
ひたすらに合唱に打ち込み、ときに衝突して、ときに素直になれず、
それでも最後には互いに心を通わせて、弾けるような色彩に溢れた合唱を展開させるのだ。

特にラストシーンにおける合唱は圧巻だ。
そこには様々な思いが飛び交っていた。
照れくささ、皆に受け入れられた喜び、たった一つの想いを受け入れられなかったほろ苦い哀しみ。
悲喜こもごもの想いを乗せて届けられる合唱は、その想いに答えるようにして、
たったひとつの、しかしかけがえのない贈り物を返礼されるのだ。
それは、ただの偶然に過ぎないのかもしれない。
しかし偶然に過ぎなかったのだとしても、それこそが合唱という煌めいた贈り物への返礼なのだと、
そう信じたい。

この小説は、強烈な感動に打ち震えるわけでもなければ、
手に汗握る壮大な物語が展開されるわけでもない。
しかし中学生という時代を過ごした人であれば、
この小説を読んだ後には、このような時代が自分にも合ったのだと懐かしく振り返らせてくれるに違いない。

映画スウィングガールズやウォーターボーイズのような青春群像劇が好みの方には
自信を持っておすすめできる逸品でございました。
是非ご一読を。

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Author:缶
SS書いたり読書感想文書いたり仕事のあれこれを勝手気ままにダダ漏れさせる予定のようなそうでないような。

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