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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第一章~蜜月~

正徳一九年(二○○七年)九月十三日(木) [1]
夕方、ミクは近所の商店街へ夕飯の買い物に出かけていた。

その商店街には八百屋や魚屋などの食料品店はもちろん、

クリーニング店や電気屋まで揃っており、

日常生活を過ごすために必要なものは大抵この商店街で揃えることができる。



そんな勝手の良い商店街まで歩いて五分で行けるというのだから、

星登のアパートは立地条件が非常に良いと言えた。

ミクが初めて商店街を訪れたとき、アンドロイドである自分に対して、

少なからず偏見や侮蔑の目で見られてしまうことは

避けられないだろうと考えていた。



しかし、それは杞憂に終わった。



この街に住み始めて間もない、それどころか起動して間もないミクに対して、

この商店街の人々はとても良くしてくれたのだ。



例えば、八百屋では。



なんだ、嬢ちゃんはアンドロイドなのかい? 

おお、そうか、最近CMでやってる最新型のあのアンドロイドか。

それならまだ起動したばっかりで、ここら辺のことよくわからないだろう。

え、クリーニング店はどこにあるのかって? 

それならそこの十字路を右に曲がって、そのまままっすぐ行けば左手に見えるよ。

でもあそこの主人は若い女の子が大好きだからなぁ、

嬢ちゃんも気をつけないと捕まっちまうぞ? 

もし何か嫌なことされたら、俺んところに来な。

なぁに、すぐに話をつけてやるさ。

あいつは昔から俺には頭が上がらねぇんだからな・・・



あるいは、精肉店では。



ねぇ、お嬢ちゃんはこっちに引っ越してきて間もないだろう? 

わかるわよぉ、ここで何年もお店を構えていればね、

その人が土地に通じているかそうでないかなんて、

仕草で何となく察しがつくようになるものさ。

あたしもね、伊達にこの店を女手一つで切り盛りしてるわけじゃないのよ。

そうだ、それじゃあこのコロッケもおまけで付けてあげるよ。

良いのよ良いのよ、遠慮なんてするもんじゃないわよ、

これはね、お嬢ちゃんの引越祝いなんだから、

遠慮無しに持って行ってくれれば良いの。

・・・そうだね、それじゃあこの商店街に寄ることがあれば、

たまにで良いからあたしの話し相手になってくれるかい?・・・



そして、魚屋では。



おお、おお、お嬢ちゃんが噂のミクちゃんかい? 

え、何で知っているのかって? 

それくらいわかるさ、今では商店街中がお嬢ちゃんの噂で持ちきりだからな。

可愛らしいアンドロイドの女の子が、一生懸命毎日買い物してるってんで、

今や時の人と言っても言い過ぎじゃぁないさ。

それにしても、嬢ちゃんはまだ起動したばかりなのに、立派なもんだよなぁ。

うちの息子も東京の大学に行っちゃいるが、

あっちで何してるかわかったもんじゃねぇ。

アイツのことだから毎日夜遅くまで遊びほうけているに違いねぇよ。

全く、親の心子知らずとはよく言うけどよ、図体ばかりでかくなっても、

親に心配をかけさせることだけは一向に治りゃしねえんだから困ったもんさ。

・・・おっと、話が逸れたな。

で、どの魚にするんだい? 

ちなみにオススメは、今の季節だとやっぱりカツオだな。

戻りカツオって言ってな、

この時期にはたっぷり餌を食べて丸々太ったカツオが沖に戻ってくるのさ。

食通の人は『カツオは戻りカツオに限る』と言い切る人までいるくらいなんだ、

買って損することはないよ・・・。



こういった具合に、人々はミクを快く受け入れ、歓迎し、受け止めてくれた。

新参者のミクを、それどころか人間ですらない、

信用できるのかどうかさえ怪しい存在を、

彼らはまるで隣人を招き入れるような心安さで接してくれるのだ。



この街は、本当に素敵な街だ。

そんな想いを抱き、そしてそこに住む人々への想いを

さらに強くするのに、時間はかからなかった。

初音ミクSS「君の心は、そこにある」九月十三日[2]へ


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