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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第一章~蜜月~

正徳一九年(二○○七年)九月十三日(木) [2]

そして今日も商店街で買い物を済ませて、帰路についていると。

ちょうど子供達の下校時間に重なったのだろうか、

子供達が集団でおもちゃ屋の前に固まっていた。



彼らが熱中しているのは、小銭を入れて透明のカプセルを取り出す玩具のようだ。

カプセルには多種多様な小さい玩具が入っており、

それをコレクションすることを楽しむ物で、

子供達からはガチャガチャという愛称で親しまれている。。



そんな子供達の傍には、彼らの引率者だろうか、一際背が高く、

白と青で彩られた制服に身を包んだ青年が佇んでいた。

青年はおもちゃ屋の前から動こうとしない子供達を前に難儀しているようだ。



「ホラ、お前達。道草を食っていないで早く帰らなければ、

 親御さんに心配をかけてしまうだろう?」



青年が子供達を促すが、彼らはその場から動こうとしない。

青年の表情には何の感情も見て取れないが、

その仕草には困惑の色が広がるばかりだ。



青年の姿に、ミクは見覚えがあった。

彼はミクと同じクリプトン製アンドロイドのKAITOだ。

一般家庭向けに設計・構築されたミクと違い、

彼らKAITOは企業の警備用途に特化した思想の元に設計されている。



従ってKAITOの姿を見ることが出来るのは、

ビジネス街や、高層ビル施工工事現場、

あるいは港や空港などの水際など、繊細な監視能力と、

自己と仲間を救助できる危機察知能力を求められるような場所に限る。



つまり、この商店街のような平和で静かな街の中で、

彼らKAITOを見かけることは非常に珍しいのだ。



「良いって良いって、大丈夫だよ」

「俺らを置いて先に行ってて良いからさ」

「もう少し、次やったらレアアイテムが出そうなんだよ」



子供達の態度は変わらない。そして勿論、青年KAITOの困惑も変わらない。



「んもう、男子っていつも勝手な行動ばかりするんだから」

「そうよ、トシヤお兄ちゃんだって困ってるじゃない!」



青年の周囲にいる女の子たちが擁護を始めた。



「あーもう、女子はいっつも口うるせえなぁ!

 俺らは女子とトシヤ兄ちゃんで先に行って良いっつってんじゃねえか!」

「それが勝手な行動だって言ってるんでしょ!」



いつの間にか場は男子vs女子の構図となり、

KAITO(子供達が呼んでいる『トシヤ』とはきっと彼のことだろう)は

その間に挟まれて、困惑と難渋に苛まれるばかりだった。

そこでKAITOはついに諦めたのか、男の子たちに告げる。



「・・・仕方ない。君たち、そのカプセルのおもちゃを終えたらすぐに帰るんだよ?

 私は女子たちを送っていくから」



男の子はホラ見ろ、とっととアッチ行けと挑戦的な言葉で送り出し、

女の子は忌々しそうに舌を出してそれを迎え撃つ。

そして狭間のKAITOは諦観の態でそれを見守っていた。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」九月十三日[3]


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