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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第一章~蜜月~

正徳一九年(二○○七年)九月十三日(木) [3]


女子に手を引かれたKAITOが、

再度おもちゃに集中し始めた男子たちに背を向けて歩き始めたところで、

ミクは子供たちに声をかけた。



「ねえ、君たち」



背中から声をかけられ、男子も女子も、そしてKAITOも一斉に振り向く。

振り向いた瞬間こそ警戒心を抱いていた子供達だったが、

声をかけてきたのが妙齢の女性だと知って、多少警戒が和らいだようだ。



「ちょっと、お姉ちゃんの手元を見ててくれる? ホラ、ここに百円玉があるでしょ?」



男の子達が素直に視線をミクに集める。

何が始まるのかと、KAITOの周囲にいた女の子も集まってきた。

右手に一枚の百円玉を乗せて、ミクは続けた。



「この種も仕掛けもない百円玉をね、こうすると・・・」



そう言いながら左手を右手の上に覆い被せ、二、三度上下に振ってみせる。

そして左手を取り去ると、一枚しか無かったはずの百円玉は二枚に増えていた。



「すっげー!」

「え、なになに? いまどうやったの?」

「ねえお姉ちゃん、もう一回やって、もう一回!」



子供達が口々に賞賛の言葉をミクに捧げる。

ガチャガチャで遊んでいた男の子も、その男の子とケンカしてた女の子たちも、

男女が入り交じってミクの手品に夢中になっていた。



「それじゃあもう一回やるね? こうしてまた左手で覆って・・・」



先ほどと同じように、両手を合わせて上下に振ってみせた。

そして左手を取ると、二枚だった百円玉が三枚に増えている。



「すっごーい!」

「えーどうやってんの? 俺全然わかんねー!」

「ねぇねぇ、もう一回やってよ! 四枚目を増やしてみせて!」



子供達は満面に笑みを浮かべている。



「四枚目を増やしてほしいの?

 うーん、ちょっと難しいと思うけど、それじゃあもう一回やってみよっか!」



ミクがそう言うと、子供達は喝采を上げた。

ミクは先ほどまでと同じように、左手を右手の上に覆い被せ、上下に振り、そして左手を取る。

すると右手にあったはずの百円玉は忽然と消えていた。

子供達は予想外の展開に目を丸くし、手のひらに視線を集中させたまま、ただただ首をひねるばかりだ。



そんな鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしている子供達に、ミクが語りかける。



「うーん、どこ行っちゃったんだろう?

 みんな、ポケットの中に百円玉が移動してないか、確認してみてもらえるかな?」



子供達は素直に自分のポケットをまさぐり始める。

無い無い、と確認し合う言葉にも愉悦と笑いが込められていた。

そしてミクはフード付きのパーカーを着た男の子に向かって言った。



「あ、こんなところにあったよ!」



ミクは男の子のフードに手を突っ込み、何かを取り出す仕草をする。

そしてフードから出てきた右手には、百円玉が四枚握られていた。



「すごーい!」

「ねぇねぇ、もう一回最初から見せてお姉ちゃん!」

「他には手品ないの? もっと見たい!」



子供達は興奮気味に、次々と賞嘆を上げる。

頃合いを見計らい、ミクは子供達に提案した。



「他にも手品ができるけど、ここだとおもちゃ屋さんに迷惑をかけちゃうし、別の場所に移動しよっか?

 どこの場所にすれば良いですか?」



言いながら、ミクは視線をKAITOに向けた。

ミクの意図を汲んだのか、KAITOは頷いて子供達に呼びかける。



「よし、それじゃあ続きはいつもの公園に行ってからだ。みんな、準備しなさい」



言われた子供達はランドセルを背負い直す。

ガチャガチャで遊んでいた男の子も、我先にとランドセルを持ち始めた。



「男子、女子、男子、女子で交互に並ぶんだ。団体行動を乱すなよ」



KAITOに促され、ミク達は移動を始める。子供達の元気で溌剌とした声が商店街を横切っていった。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」九月十三日[4]

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