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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第一章~蜜月~

正徳一九年(二○○七年)九月二八日(金) [1]



夕食を終え、食器も一通り洗い終えた後、星登とミクは部屋でテレビを見ながらくつろいでいた。



二人が見ているのは、大家族の特集番組だ。

一家総勢で十人にもなる大家族の日常生活を追いかけたドキュメンタリー番組である。

本来、星登はこの種の番組を好んで見ることはなかったが、チャンネルを何とはなしに変えているうち、

ミクが興味深そうに見始めたので、そのままチャンネルを固定させたのだ。



テレビを見ながら、ミクは嬉々として語る。



「あ、この子あっくんに似てる! 好きな女の子に素直になれないとろこなんてそっくりですよ」



そうかと思えば、数分後にはまたこんなことを語ったりもする。



「それと、こっちの子はのりちゃんに似てます!

 自分の好きな物をなかなか離さないところが、ちょっと似てるかもです」



仲良くなった近所の子供達との何でもない共通点を見付けては、とても楽しそうに話すミク。



最近、ミクが近所の子供達の登下校に付き添い、

また街の警備型アンドロイドとも豊かな親睦を深めていることを星登は知っていた。

先ほどミクが話していた『あっくん』や『のりちゃん』というのも、確か近所に住む子供の名前だ。

星登は会ったことがないが、ミクとの会話の中で何度か出てきた名前である。



星登は、ミクがこうやって街の人々と様々な交流を為していることをとても良い傾向だと思っていた。

いくら介護用途として開発されたアンドロイドとはいえ、

いつまでも家に籠もって家事ばかりしていては息が詰まってしまうに違いない。

ミクはとてもよく働いてくれているし、マスターである星登がいないときくらいは、

羽を伸ばしてリラックスするべきだ。



またミクが来てくれたことで、星登自身の生活にもある種の変化が起きていた。

日々の生活が規則正しい健康的なものになったことは勿論だが、

近所を歩いているときや、いつもの商店街を訪れた際などに、よく声をかけられるようになったのだ。



話の内容は、いずれもミクに関するものばかりだった。

しかもミクは星登の知らぬところでどのような話をしているのか、

話しかけてくる人はいずれも非常に好意的に接してくれた。



彼らから聞くミクの話と、ミクから聞く彼らの話。



星登はミクを介して、疎遠になりつつあった近所の人々との接点を、改めて持つことができるようになった。

星登にとって隣人とは、長らく赤の他人と同義でしかなかったが、

ミクが住まうようになってから僅か一ヶ月足らずで、

彼は『街』の一員として受け入れられ始めたことを実感していた。



隣人から知己の仲として受け入れられるこの体験はとても久しく、

どこかむず痒い感覚を弄びながら、星登はミクが来たことで少しずつ変わり始めた生活を楽しんでいた。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」九月二十八日(金) 「2」 へ



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