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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第一章~蜜月~

正徳一九年(二○○七年)十月七日(日)[1]



休日の正午、星登はアパートの自室でテレビを見ながら過ごしていた。

ミクは今し方終えた昼食の後片付けをしている。

キッチンから聞こえてくる水の流れる音と皿の触れ合う硬質な音が重なり合って、

星登の耳朶を心地よくくすぐる。



開け放たれた窓からは、昨夜降った雨の影響だろうか、どこか湿り気を帯びた風が運び込まれ、

食事を終えて少し火照った身体を優しく撫でる。

穏やかな軟風が部屋を包み、緩くなり始めた星登の瞼を閉ざそうと、柔らかく誘う。



ゆらゆらと船をこぎつつ、薄い微睡みに身を任せていると。



「こーんにーちはー!」



階下の庭から元気な子供の声が聞こえてきた。

その声に驚き、星登は思わずビクリと身体を震わせてしまう。



今の姿を見られていなかっただろうかと、キッチンからやってきたミクに視線を向ける。

ミクはにこりと笑みを浮かべていた。

どうやらバッチリ見られたらしい。

星登は恥ずかしさに頬が火照っていくのを感じた。

照れ隠しに咳払いで誤魔化してみる。



ミクはエプロン姿のまま窓から身を乗り出し、庭にいる子供達に声をかけた。



「こんにちは、のりちゃん、ちぃちゃん!」



「ミクお姉ちゃん、あーそーぼ!」



「うん! でもごめんね、お姉ちゃんまだやらなきゃいけないことがあるから、

 もうちょっと待っててくれる? すぐに終わらせるから!」



うん待ってるよ! と元気な声が聞こえてきて、ミクは身体を部屋に戻した。



「ミク、行ってきなよ」星登が声を掛ける。

「子供達が待ってるんだろ? 残りの家事くらい僕がやっておくから、ミクは遊んできな」



「え、でも・・・」



「どうせ残っているのは皿洗いくらいだろ? いくらなんでも、それくらいなら僕にだってできるさ。

 それにたまにはこれくらいの仕事をしないと、腕がなまってしまうよ。だからさ、遠慮せずに行ってきな」



ミクはしばし顎に手をあてて悩んだ末、遠慮がちに言った。



「・・・それじゃあ、お願いしても良いでしょうか?」



「ああ、勿論さ。楽しんでおいで」



「あの、洗ったお皿はかごの中に入れてくだされば、食器棚への片付けは私がやっておきますから・・・」



「良いから良いから、早く行ってきな」



ミクの謙虚さに少々の苦笑を交えながら、星登は彼女を送り出す。

ミクはエプロンを外し、玄関先でペコリと星登にお辞儀をした後、ドアの向こうに消えていった。



「・・・さて、やると言ってしまった手前、とっとと片付けてしまうか」



独り言で景気をつける。

庭から子供とミクの楽しそうな黄色い声が聞こえてきて、星登のやる気も倍増した。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」十月七日[2]へ



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