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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第二章~懸想~

正徳二十年(二○○八年)一月九日(水)[2]


「原因なんて、きっと何もないんだよ」

文代がそっと語り始める。

「はっきりした理由があるときもあれば、

 ただ何となく、気がつけばその人のことばかり考えていたりする。

 恋なんてのはそんなもんさね。

 曖昧で、掴み所が無くて、だけど何よりも強く人間を突き動かしたりする、それが恋ってもんだよ。

 ミクちゃんが戸惑ってしまうのも、無理ないことなのさ」



文代はお茶を一口すすってから、言葉を続けた。



「余り深く考えなくて良いと思うよ。

 恋に悩みはつきものだと言うけど、いまミクちゃんが不安に思っていることは、

 それとはちょっと違うように思うしね。

 ミクちゃんは、緒方さんのことを考える度に、

 胸が締め付けられるような感覚になっちゃうんだろう?」



文代の問いかけに、ミクは素直に頷く。



「だったら、その締め付ける感情そのものは、そのまま受け入れるべきさ。

 それを受け入れた上で、自分が何をすべきか、

 何をしたいのか分からなくなってしまったら、いつでも相談においで。

 私も伊達に長生きしてないからね、恋の悩みの相談を受けるなんて数え切れないくらいあるし、

 ミクちゃんにとってためになる助言のひとつやふたつ、できると思うよ」



「・・・・・・はい、・・・・・・ありがとうございます・・・」



口ではそう返事するものの、抱えている不安や悩みを完全に払拭できたわけではなかった。

文代はこの不安や胸の締め付けそのものを受け入れろという。

得体の知れない体の不調、感じた事のない奇妙な憂いと悦びをも受け入れろという。

そして受け入れた上で、その先にあるであろう憂慮や懸念を見つめろという。



果たして、今の自分にそこまで割り切った考えができるだろうか。



ミクの胸中に漠然とした不安が澱となって沈んでいく。

星登の事。

問題の起点がただその一点に尽きることはミクも自覚していたが、

そこからもたらされる諸々の不調や不安に対し、

ミクは余りに経験が足りず、策を持たず、無力に過ぎた。



(星登さん・・・・・・)

口の中でそっと呟く。



無意識に、指が髪に留められた髪飾りへ伸ばされた。

これまで何度も触れてきたマーガレットのヘアピン。

その硬質的な感触は何も変わらなかったが、

しかしミクの胸中には穏やかで確かな安息が満たされていく。



そんなミクの姿を、文代は眩しい物を見るかのように目を細めながら、

満足げな微笑みを浮かべつつゆったりと見つめていた。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」一月九日[3]へ

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