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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第二章~懸想~

正徳二十年(二○○八年)一月九日(水)[6]


「ここ・・・だよね?」



トシヤから送信された住所ファイルを確認しながら、

ミクはとあるビルの前に立っていた。

住所を再三にわたって確かめてみるが、

このビルの二階にALKOSの出張所があることで間違いないようだった。



階段で二階まで上り、ドアの前に立つ。

そのドアには『株式会社ALKOS』と印字されている。



「あのぉ・・・、こんにちは・・・・・・」



そろりとドアを開けて、遠慮がちに声をかけてみた。

一見した限り、部屋の中には誰もいない様子だった。

本当にここのフロアで正しかったのだろうかと不安に駆られ始めた頃、

給湯室から一人の女性が出てきた。



「あら、こんにちは。ごめんなさい、気づかなくって・・・あら?」



穏やかな笑顔を自然に湛えながら、スーツを華麗に着こなした女性が声をかけてきた。

その女性の姿を見て、すぐにミクは思い至る。



「もしかして、あなたがコトミさんですか?」



「もしかして、あなたがミクちゃん?」



二人同時に言葉を発した。

それが何とも可笑しくて、二人でクスクスと笑みを零してしまう。



「ごめんなさいね、さっきトシヤから連絡があったもんだから、つい」



「いえ、とんでもない。

私の方こそごめんなさい、初対面なのに失礼でしたよね」



スーツの女性が可笑しそうに話した。



「さぁ、どうぞ入って頂戴。

誰もいないから、遠慮しなくて良いわよ」



促されて事務所へ足を踏み入れるミク。



「適当なところに座ってて。

今から何か入れるわね。

コーヒーで良いかしら?」



「あ、はい、ありがとうございます」



言われるまま、ミクは一番手前にあった事務用の椅子に腰掛けた。

そうしてからミクは改めて事務所内を見渡してみる。

部屋は四十平米ほどの広さで、事務机もいくつか配置されている。

そして誰かがその机を利用している気配は感じられるのだが、

この部屋の閑散とした空気は、確かに女性以外の誰かがこの部屋を利用することはなさそうな、

そんなうら寂しい空気を滲ませていた。



「はい、どうぞ」

スーツの女性がコーヒーを持ってきた。

「砂糖とミルクはひとつずつで良いかしら?」



「あ、いえ。このままで結構です」



湯気立つコーヒーカップをソーサーごと受け取るミク。



「あの、改めて、初めまして」

ミクがぺこりとお辞儀をする。

「私、初音ミクと言います。

 この度はトシヤさ・・・、KAITOさんのご紹介でこちらにお邪魔させていただきました」



「こちらこそ、初めまして。私がMEIKOよ。それと、」

表情を崩して続ける。

「見ての通り、このフロアには他に誰もいないから、そんなにかしこまらなくて良いわ。

 それに私の事はコトミと呼んで良いし、彼の事もトシヤと呼んで結構よ」



そうたおやかに微笑む彼女の姿は、ミクにとって羨望すら抱かせる程に輝き映えて見えた。

綺麗に切りそろえられた髪は彼女の理知的な佇まいをよく演出し、

身を包むオフィススーツは美しく整えられたスタイルを魅惑的に彩っている。

そして何よりも、彼女の表情に湛えられた柔らかな微笑みこそ、コトミの魅力を一層際だたせていた。

警備用途アンドロイドであるトシヤは人間とのコミュニケーション能力に重点を置かれなかったため、

表情に変化をもたらさない低レベルの情動プログラムしか搭載されなかったが、

秘書用途アンドロイドであるコトミは職員と円滑なコミュニケーションを図るため、

当時最高の情動プログラムが搭載されたと聞いている。

コトミが湛える自然な微笑み、コトミが振る舞う華麗な佇まい。

それらはミクから見ても非常に素敵な姿に見えて、一種の憧れすら抱かせる、

魅力的な雰囲気を纏わせている。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」一月九日[7]へ

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