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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第二章~懸想~

正徳二十年(二○○八年)一月九日(水)[7]


ミクはコーヒーを一口含んで、気になっていた事を質問してみた。



「あの・・・ここには他の従業員の方はいらっしゃらないんですか?」



「やっぱり、そこは気になるわよね」

コトミは笑みを零した。

「一応いることはいるのよ、私の他に三人くらいね。ただ今日はもうみんな帰ってしまっただけ。

 この事務所に常駐しているアンドロイドは私とトシヤだけだから、今日はもう気兼ねしなくて良いのよ」



「そう、なんですか?」



ミクはちらりと時計を確認する。

一般的な企業の終業時刻まではまだ時間がある。



「みんな本社に立ち寄ってから帰るって言ってたからね。少し早めにここを出たの。

 トシヤがここに帰ってくるのはいつも日付が変わる頃だから、これからしばらくは誰も来ないわ」



コトミが説明を補足する。

ミクもそれ以上は気にしなかった。



「ねぇミクちゃん、それよりもさ」

コトミは淑やかな笑みを湛えたまま言葉を紡ぐ。

「私、こうしてあなたとずっとお話してみたかったの」



そう告げるコトミの佇まいは、やはり華麗だ。

背筋を伸ばし、しなやかに足を揃え、表情は微かな笑みを湛えている。



「トシヤはね、いつも事務所に帰ってくるとその日一日の出来事を教えてくれるの。

 ホラ、トシヤって子供が好きでしょう?

 だからいつもは子供たちの話に終始しがちなんだけど、

 たまにね、ミクちゃんっていう女の子がとても素敵なんだよって、

 そんなことを言うようになったの」



コトミの語りはあくまで静謐に鎮まっている。

そこには淑やかな沈黙がもたらされて、不思議と空気がふんわりと和らいでいくようだった。



「だから私もね、自然にミクちゃんに興味が出てきちゃったの。

 ミクちゃんってどんな子なんだろう、明るくて素直な良い子だってトシヤは言うけど、

 どんなおしゃべりができるのかしら、とかね。

 そんなことばっかり考えてたのよ」



「そ、そんな・・・恐縮です・・・」



ミクは身を縮めてしまう。

そんなミクの様子を見て、コトミは柔らかな笑みを湛えさせた。



「そのミクちゃんがトシヤに相談を持ちかけたって聞いたのが、ついさっきのこと。

 しかもそのトシヤ自身が、ミクちゃんの相談に乗ってやってくれ、

 僕では力になれなかったから、なんて言うじゃない。

 あのときのトシヤの凹みようったらなかったわ」



コトミがクスリと笑みを零す。

ミクはただ萎縮してしまうばかりだ。



「それで私は聞いたの。

 ミクちゃんからどんな質問をされたのかってね。

 そうしたら、『特定の人に思い入れを感じた事はあるか』なんて聞き方をしたって言うじゃない。

 もうそれでピンと来ちゃったわ。

 あいつ、どうせ『子供たちを見てると、充足感めいたものは感じるよ』とか、

 そんなことを答えたんじゃない?」



「凄いです! その通りです! よくわかりますね!?」



「それはわかるわよ。

 だってトシヤとはずっとこの事務所で暮らしてるんですもの。

 アイツの思考パターンくらいは大体わかるわ」



いたずらっぽく笑うコトミ。

先ほどまで見せていた落ち着きのある雰囲気とは違い、

どこか少女めいた、あどけない印象を受ける笑顔だった。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」一月九日[8]へ

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