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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第二章~懸想~

正徳二十年(二○○八年)一月十一日(金)


所変わり、星登の職場にて。



時は夕刻を迎えて久しく、終業時刻を刻み終えた職場はどこか浮ついた雰囲気を孕みながら、

健康的な陽気さをも綯い交ぜにしている。

それは職場の人間を公平に伝播して、開放的な気分を持て余しつつ、

彼らに週末の予定について互いに嬉々として話し合わせる程度には明るい空気に満たされていた。



そして星登にとってもそれは同様で、快活としてしまう気分を抑えながら、

荷物をまとめて帰宅しようとしていたときのことだ。

そこへある同僚が星登に話しかけてきた。



「なぁ緒方、久しぶりにみんなで飲みに行かないか?」



そう話しかけてきたのは山本だ。

彼と星登は同期であることもあって、職場で数少ない気の置けない同僚の一人だった。

誘われた星登はしばし考えた後、



「うーん・・・・・・、やっぱり今日はやめておくよ。ごめんな、また誘ってくれ」



そう言って職場を後にしてしまった。



ため息をつきつつ、星登を見送る山本。



「なぁ山本、やっぱり緒方は誘えなかっただろう?」



そう呼びかけるのは、同じく山本と星登の同期である高橋だ。



「だから止めとけっつったんだよ。どうせアイツを誘ったって来やしないんだって」



「まぁまぁそう言うなって」

辛辣な高橋を宥めつつ、山本が続ける。

「一時期のアイツの落ち込みようっつったらなかったじゃないか。

 あの頃はそのまま放っておいたら、

 土日だって全く飯も食わずに過ごすんじゃないかってくらい無気力だったのが、

 今ではあの通り元気に家に帰っていくんだから。

 無理矢理俺たちが飲みに誘ったりしなくなって済んでる分、アイツは心の健康を取り戻してるんだよ」



穏やかに言葉を繋げる山本に、高橋は面白く無さそうにいらえを返す。



「・・・まぁ、確かにな。あの頃に比べれば、今の方が健康的になったって言えるのかもしれねぇよ」



「だろ? 確かに付き合いは悪くなったかもしれないけど、

 昔の溌剌とした緒方に戻れたんだと思えば良いじゃないか」



「・・・いや、山本」

声のトーンを落として、高橋が呼びかける。

「俺が嫌なのは、まさにそこなんだよ」



「嫌だって・・・なんか穏やかじゃないな。何が気に入らないんだ?」



「あいつの、最近の付き合いの悪さが、さ。

 確かに、一時期の塞ぎ込んでた頃に比べれば、今のアイツはよく快復したものだと思う。

 だけどよ、アイツがあそこまで元気になれた原因って、お前知ってるか?」



「・・・いや、そういえば良く知らないな。

 カウンセリングとかに通って、地道に回復してきたってわけじゃないのか?」



「違う違う、そんな健康的なもんじゃねぇよ。

 アイツ、どうやらアンドロイドを買ったらしいんだよ。

 それも、あの<初音ミク>を!」



「<初音ミク>!? <初音ミク>って、あのCMのアンドロイドか!? うわぁ・・・」



山本の表情に浮かび上がるのは、明らかな嫌悪のそれだった。



「なぁ、気持ち悪いだろ!? 緒方のヤツ、アンドロイドなんかにうつつを抜かしてるんだぜ!?

 そんなのに骨抜きにされるくらいだったら、

 キャバクラの姉ちゃんに貢ぎまくってるっつー方がよっぽど健康的だよ!」


初音ミクSS「君の心は、そこにある」幕間其の二[1]へ

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