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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(二○○八年)二月一日(金)[3]

「へぇ~、凄いわね」

ようやく井上が口を開いた。

「こうして見てると、本当に人間みたいだわ」



そう言いながら、今度はぺたぺたとミクの身体を触り始める。

髪の毛、耳、頬、二の腕と、遠慮の無い井上の接触にただ耐えるミク。

その愉快とは決して言えない感触に、ミクは困惑を隠せない。



そうしてから、ふいに井上はミクの控えめな胸の膨らみを鷲掴みにしてみせた。



「うひゃぁっ!」



さすがにここまでの行為を予想していなかったミクは咄嗟に黄色い悲鳴を上げ、

前屈みになって井上の手から逃れた。



「な、ななな・・・」



何をなさるんですか、とは言えないミク。

胸中は驚愕と当惑の嵐がひたすらに渦巻いていたが、

彼女が星登の同級生であるという事実が、ギリギリでミクに抗議の言葉を飲み込ませていた。



しかしそんなミクを差し置いて、一方の井上の表情はあくまで涼やかなそれを浮かべたままである。



「あら、意外ね。アンドロイドも、胸を触られると恥ずかしいっていう感情を持つんだ?」



しれっとこともなげに言い放つ。

ミクはその横柄とも言える発言に戸惑いを覚えつつ、何と言葉を返せばよいのかもわからなくて、

とにかくその場で微動だにせず固まっていることしかできなかった。



そんな、僅かな沈黙が降りたところに。



「なあ井上、ミクをからかうのも程々にしてやってくれよ」

絶妙なタイミングで星登が言葉を挟んできた。

「それよりもお腹空いてるだろ? ホラ、せっかく来たんだからミクの手料理を味わっていってよ。

 ご飯の準備を頼めるかい、ミク?」



「え? あ、はい、勿論です! すぐにご用意いたします!」



星登の助け船で我に返ったミクは、すぐに食事の仕上げにとりかかる。

その間に星登と井上の二人は奥の部屋でくつろいで、ミクの料理が出来上がるのを待っていた。



ミクは、星登が招いた初めての客を歓迎し、窮屈な思いや退屈など絶対にさせず、

心の底から料理を楽しんでもらい、笑顔で帰宅できるようもてなすつもりであった。



しかし、現実はどうだ。



例えば、ミクが料理を食卓へ並べているとき。



「へぇ、美味しそうじゃないか。これはどんな料理なんだい?」



「これはナスと鶏肉の蒸し焼きにチーズをからめてピザ風に仕上げてみました」



「どれどれ・・・うん、美味しいよミク! でもこれ、使ってるのはただのチーズかい?

 なんか普通のチーズとは違う風味を感じるんだけど・・・」



「あ、隠し味としてクリームチーズも少しトッピングしてるんです。

 その方がまろやかな風味を楽しめると思って」



「ああ、この味はクリームチーズだったのか! いやぁ美味しいよミク!

 ほら井上、お前も食べてみろよ!」



星登に促されて一口だけ料理を口に含める女性。



「・・・へぇ、ロボットが作った割には、まあまあね」



というぞんざいな感想だけを返し、後は無反応を決め込んでしまった。



あるいは、高校の頃の話で談笑しているとき。



「高校のころと言えばさ井上、二年のとき同じクラスだった上原って覚えてるかい?」



「イサムくんでしょ? 覚えてるわよ、勿論」



「アイツ、絶対お前の事好きだったんだと思うよ。

 何かといってお前と同じグループになりたがったり、

 休み時間のときもお前の周りを無意味にうろちょろしたりさ」



「あ~、そんなこともあったわよね。

 うん、でもアレは私も薄々気がついてたわよ。結局、告白は最後までされなかったけど」



「ハハハ、惚れられた者の強みか! なあミク、井上はな、高校の頃はすっごくモテたんだよ。

 恋愛で打ち落としてきた男子といったら数え切れないくらいなんだから」



「へぇ~、でもわかります、井上さんとってもお綺麗ですし、学生時代もきっと美人」



「何よ緒方くん、その言い方だとまるで今は全くモテてないみたいじゃない!」



そして二人で笑い合う。

このように、ミクが談笑に加わる直前に会話の主導権を取り戻し、

絶妙の間合いでミクが談話に加わるのを牽制していた。


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