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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

幕間 其の三[2]




クリブトン社が満を持して発表した、企業向け秘書用途自律型アンドロイド『MEIKO』。



この製品は商業的に異例の大成功を収めた。

『MEIKO』を発表したクリブトン社の昨年度の売上高は、

前年比六十三%増の百八十一億円となり、

これは従来予想を五十四%上回る結果となって黒字修正された。

更にそのうち『MEIKO』の売り上げは全体の六割を占めており、

まさにアンドロイド『MEIKO』はクリブトン社を代表するフラグシップ製品となったのである。



これ程までに『MEIKO』が幾多の企業で受け入れられたのには、いくつかの理由がある。



第一に、コストの問題。

我が国では一人の正社員を雇用する場合、

労災なども含めれば年間一千万円ほどのコストがかかる。

しかし『MEIKO』は三年リース契約を結びさえすれば、

年間二百万円からアンドロイドを利用することができるのである。

この圧倒的なまでのコスト圧縮は、経営者にとって垂涎の労働力であった。



第二に、雇用の問題。

『MEIKO』が配備される以前、各企業のグループマネージャーは要員計画を行う際に、

敢えて『無能で不必要な人材』というものをチーム内に残すのが通例であった。

これは『本当に優秀な人材への業務負担を、少しでも軽くするため』という理由もあったが、

それ以上に、『より優秀な人材を確保しやすくするため』でもあった。

何故なら、仮に外部から極めて優秀な人間がチームへ

「アサインされるかもしれない」というチャンスが訪れたとき、

先述の『無能な人間』を切り捨て、即座に人事部へ

「人数が足りないからこちらへ優先して人間を配備してくれ」と交渉するのである。

つまり、『優秀な人材を手許に残しておく』ことは当然重要だが、

『優秀な人材が来るチャンスを逃さない』ためにも、

敢えて『無能で不必要な人材』を残して余剰分を確保しておくのである。

しかしこの手法にも難点がないわけではない。

不必要な人間とはいえ、切り捨てるということは異動、悪くすれば解雇する必要まで出てくる。

大抵の場合は自主退職を勧奨するのが一般的だが、

いずれにせよ解雇するという事実に他ならない以上、社員にも会社にもかかる負担はとても大きい。

そこへいくと、MEIKOの存在は極めて好都合だ。

利用したいときにはリース契約を更新するだけで良いし、

必要なくなればリース違約金を支払いいなくなってもらえば良い。

退職勧奨による退職金の増大や解雇対象者の転職にかかるアフターフォロー諸々に比べれば、

リース違約金を支払うだけで後腐れ無く『いなくなってもらえる』アンドロイドの存在は、

それだけで好都合だった。



第三に、機能の問題。

クリブトン社の営業が顧客へ提案活動をする際、

このアンドロイドがどれほど優れた能力を有しているのかを蕩々と説明しても、

殆どの担当者が一律に心配するのはセキュリティの問題だった。



アンドロイドが見聞きした情報はHDDなりフラッシュメモリなり、

何かしらの記憶媒体へ残される筈だが、その媒体から情報が漏れる事はないのか?

またリース契約の満期が切れてアンドロイドを返却する必要がある場合、

アンドロイドに蓄積された情報は完全に削除することができるのか?



これはあらゆる企業のシステム担当者が最初に懸念する項目であり、

そしてもっとも長い時間をかけて解決を図るデリケートな問題でもある。

しかしこれらセキュリティの問題に対してすら、剣持はその天才性を発揮してみせた。



アンドロイドの記憶媒体から情報が不正に漏出しないよう、

アンドロイドに記録される全ての情報には二○四八ビットのAES暗号が施された。

しかしそれでは、暗号化する際に莫大な計算時間が必要となってしまい、

深刻なボトルネックとなってしまう。

そこで剣持は暗号化による情報伝達遅延を防ぐために、

この暗号化機構すらもハードウェア開発してみせ、

その結果、シーケンシャル・ランダムR/Wにおける遅延時間を

非暗号化時と比較して○.一%以下にまで抑えたのだ。

またリース満了時におけるデータの完全削除についても、剣持は独自にデータ削除機構を開発した。

通称『SS(Semiconductor Sanitization)』

と呼ばれるモジュールによって、物理的に情報を完全削除させてしまうことに成功したのである。


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