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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)三月八日(土)[5]


「・・・まぁ何でも良いけどさ、とにかく、私の恋路の邪魔だけは絶対にしないでよね。

 私が言いたいのはそれだけよ。

 緒方くんの傍にアンタがいるだけで私の邪魔をしてるってこと、肝に銘じておきなさい」



「そんな・・・、星登さんは、私のマスターなんです。

 ・・・それなのに傍にいるなだなんて、そんなお言葉は、あんまりです・・・」



「ああもう、それがマジでウザいっつってんのよ!」

苛立ちの余り、ついに井上は怒りに声を荒げてみせた。

「アンタは何? さっき自分で言ったでしょう、<初音ミク>はロボットですって!

 たかがロボット風情が、人間様の恋の邪魔をしてんじゃないわよ!」



井上の理不尽な怒りはそれだけで収まらず、次々と言葉を紡いではミクの耳をつんざいていく。



「緒方くんの邪魔をするな! 私と出かけようとする緒方くんを邪魔するな!

 アンタは緒方くんの事を好きだとか言ってるけど、バカ言ってんじゃないわよ!

 そんな実りもしない恋なんて後生大事に抱えてないで、

 人間である私の恋を成就するためにサポートしなさいよ!

 アンタたちロボットは、人間に尽くすために作られたんでしょう!

 だったら私に尽くせ! 人間である私のために尽くせ!

 そのためにも緒方くんを惑わすな! 金輪際私の邪魔をするな!」



井上の激情は吹き荒れる雑言となってミクを襲った。

その攻撃を全て受けきったミクは、

胸中にわずか残されたあらゆる気力を芯まで凍り付かせ、

怯えるように身を震わせる事しかできなかった。



激甚な情動をぶつけきった井上はそこでひとつ大きな息を吐き、ミクに告げる。



「私が言いたい事はそれだけ。

 それと、今日話した事は絶対に緒方くんに話すんじゃないわよ。

 でないと、わざわざアンタと二人きりになることを選んだ意味がないんだから」



言われるまでもなかった。

今日話したことは彼女の恋に関するものであり、極めてプライベートな内容だ。

彼女から釘を刺されるまでもなく、ミクはこのことを誰かに話すつもりなど毛頭なかった。



「それじゃあ私、もう行くわ」

ベンチから立ち上がる井上。

「言っておくけど、私のすぐ後に付いてきたりしないでよね。

 アンタと一緒に居る所なんて、絶対に誰にも見られたくないから」



そう言って井上が駅へ向かい歩き始めたところで、ミクはある疑問を思い出した。

それは、先日から今日に至るまで、井上から必ず聞き出そうとしていた質問だ。



「あの、井上さん!」



ミクの呼びかけに、面倒くさそうに振り返る井上。



「井上さんは、どうして私のモバイルフォンの番号をご存知だったんですか?」



瞬間、井上の表情があからさまに歪んだ。

それは井上にとって余り面白くない質問だったらしい。

何か後ろめたい事情でも抱えているのだろうかと、彼女の返答を待つミク。

たっぷり数秒ほど待たされてから、井上は冷静を気取りつつ、いらえを返した。



「・・・緒方くんに教えて貰ったのよ。話はそれだけ? じゃあ帰るわ」



そのまま足早に去っていく井上。



井上の背中を見送りながら、ミクは彼女の言葉が嘘であると確信していた。

あの星登が、いくら旧知の友人に対してとはいえ、

ミクの個人情報とも言えるモバイルフォンの番号を勝手に教えてしまうとは到底思えなかった。

おそらく、井上は星登の目を盗んで彼の携帯を勝手に調べたのだろう。

彼女ならばそれくらいのことは平然とやってのけるような気がした。



初音ミクSS「君の心は、そこにある」三月八日[6]へ

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