スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)三月八日(土)[7]


同日、夜の七時頃。

しんと冷え切った空気が早春の闇に横たわり、

街灯が冷たいアスファルトを頼りなく照らし出している中で、

星登はアパートへの帰路に着いていた。

以前ならば自宅への帰路は、

部屋で待っていてくれる少女のために足取りも軽く歩を進める事が出来たものだが、

ここ数週間は漠然とした不安に囚われ、

重々しく道のりを辿る事しか出来なくなってしまっていた。



それもこれも、ミクの『ココロ』への不信を原因としている。

彼女への不信が疑念を呼び、疑念が不安を生んで、

その結果ミクをなるべく避けようという行動へ移ろわせるのだ。



彼女の振る舞いを信じて良いのか。



彼女の笑顔を信じて良いのか。



彼女の『ココロ』を信じて良いのか。



星登は己が抱く思念の基部を固める事も出来ぬまま、

ただゆらゆらと思惟を揺すぶらせて、

何の結論を導かせることもなく、問題を先送りにしていた。



それは例えばここ一ヶ月における休日の行動を振り返ってみても明らかだった。



ミクの『ココロ』に何の疑問も抱いていなかった頃は一日を

ミクと共に過ごすことに何の抵抗もなかった。

しかし最近は、なるべく彼女と一緒にいる時間を避けるため、

午前中から星登一人で外出し、夜は友人と食事に行ったりと、

自宅にいる時間を極力減らす事に注力してばかりだ。

ミクとどう接すれば良いのか、

そもそも彼女を信じても良いのか見当もつかなかったために、

ミクという少女から逃げてばかりいるのだ。



だから今日のように、珍しくミクが午前中から外出すると聞いたときには内心ほっとしてしまう。

それでも昼過ぎには戻ってくるとあらかじめ聞いていたので、

星登はミクが帰ってくるのを待たずに、

彼女と鉢合わせしないようそそくさと外出してしまった。



だが外出とは言っても『時間を潰す事』を目的に外へ出ているため、

外で過ごす時間は無為そのものだ。

理由もなく図書館へ行ってみたり、喫茶店で飲みたくもないコーヒーを注文して、

やかましいゲームセンターを冷やかしてみたりもする。

それらにもいい加減飽きたころ、ふと思い立って人生初のパチンコに挑戦してみたが、

あっという間に所持金を吸い込まれたので早々に退店した。



そこで時間を確認したらまだ夕方の六時だったので、

友人を集めて酒でも飲もうかと、高校時代の級友や職場の同僚達に声をかけてみた。

だが生憎どの友人も都合が合わず、仕方なく星登は一人で牛丼を食べて、

他にすることもなくなり、諦めてのろのろと自宅へ戻っている最中なのだ。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」三月六日[8]へ

関連記事
スポンサーサイト

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

プロフィール

缶

Author:缶
SS書いたり読書感想文書いたり仕事のあれこれを勝手気ままにダダ漏れさせる予定のようなそうでないような。

缶のTwitterアカウント

缶のpixivアカウント

オススメ!

最新記事
リンク
ブログ内検索
カテゴリー
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。