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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)三月八日(土)[11]


先ほど辿った家路を逆方向に歩きながら、星登は自らの行為を思い返す。



最後まで、星登はミクの表情に目を向けられなかった。

まともに目を合わせることがとてつもなく恐ろしくて。

彼女のあるかどうかもわからない『ココロ』に触れる事が、恐ろしかった。

彼女に罪悪感を抱いてしまう事が、恐ろしかった。



(だけど、それでも……)

星登はぎり、と歯を食いしばって、苛烈な後悔に身を浸しながら胸中で叫ぶ。



(……僕は、ミクを傷つけるつもりなんてなかったのに!)

紺色の冷たい空気を全身で浴びながら、星登はただただ悔恨の念に苛まれ続けた。

横切る人々が、通り過ぎる車が、街灯の明かりが、夜の風が、

全てが星登を責めているように思えた。



くそっ……、くそっ……!



確かに自分は迷っていた。

ミクの『ココロ』を信じ切れなくなっていた。

ミクへの気持ちにどう整理をつけるべきか悩んでいた。

しかしそれらの迷いを、癇癪としてミクにぶつけるなんて、どう考えても間違っている!

悔恨、苛立ち、不安、焦慮、悔恨、自責、非難、悔恨、自虐、悔恨、悔恨、悔恨。



いくら歩を進めても、いくら腹の底に力を込めても、

身を抉るような悔恨が消え去る事はなかった。

ただただ純然たる悔いばかりが星登を苛んで、

自責の念が星登の胸を豪然と押し潰していく。



「……っ!」



星登の苛立ちは遂に臨界を越えて、手近にあった電柱を殴りつけてみせた。



「……ぅっ、……くっ!」



二度、三度と電柱を続けて殴り、固い音だけが辺りに響く。

拳の皮がむけ電柱に血がこびりついても、星登は自虐的な暴力を止めようとしなかった。

腹の中を蟻が這いずるような悪寒を持て余しつつ、

星登は拳を振り上げては電柱にぶつけていく。

己の気持ちに決着をつけられない自身の弱さが腹立たしくて、

他人へ八つ当たりせずにいられない自分の脆さが悔しくて、

ただひたすらに、一心不乱に電柱を殴り続けた。



そのときふいに、携帯が鳴った。


初音ミクSS「君の心は、そこにある」三月六日[12]へ

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