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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)六月二十五日(水)[9]


「あの……、」

そこでミクは初めて言葉を挟んだ。

「その、早輝さんって、……どんな方なんですか?」



ミクはずっと以前から――星登から妹がいると仄めかされたときから――抱いていた疑問を、

初めてここで口にした。



「フフ、やっぱり気になるかい?」



そして文代はかけがえのない過去を思い返すように、ゆったりと語り始めた。



「早輝ちゃんはねぇ、まあ一言で言うと、ミクちゃんにそっくりな子だったよ」



「私に、ですか?」



「そう、顔も、姿も、声も、本当にミクちゃんにそっくり。

 去年初めてミクちゃんに会ったときなんてさ、むしろ早輝ちゃんの生き写しだと思ったもんさね。

 それくらい、あなたたちはそっくりだよ」



言われたミクは、どこかむず痒い、不思議な感覚に包まれた。



「それでね、やっぱり早輝ちゃんもミクちゃんと同じようにとっても可愛かったからさ、

 学校では凄くモテたみたいでね。

 男の子からラブレターもらうのなんてしょっちゅうだったよ。

 それでね、そのことを緒方さんが知ったときの取り乱しようったらなくってね、

 妹にはまだ早いとか言っちゃって。

 本当、妹離れができないお兄さんだよ」



話を聞きながら、ミクは照れくさくなってしまった。

自分と瓜二つだと言われた少女が『可愛い』とか『モテていた』など言われれば、悪い気などしない。



「そうかと思えば、ひどくババくさい子だったりしてさ。

 私がお花を育ててるのを見て、自分もやってみたいって言い出したんだけど、

 『ここで野菜を育てれば、夕飯のおかずにもなりますよね』なんて言い出して、

 本当に野菜を育て始めちゃったの。

 仮にも女子高生なのに、発想がホントおばさんくさくてね、

 休日になるとジャージ姿で土いじりしてるんだから。

 色気なんてあったもんじゃなかったわよ。

 その早輝ちゃんの姿は、緒方さんも苦笑いしながら見てたもんさね」



文代とミクは二人でころころと笑った。



「早輝ちゃんの学費も全部緒方さんが捻出してね、彼はあの若さで本当によく頑張ってたよ。

 早輝ちゃんもお兄ちゃんの助けになるようにって、

 毎日ご飯作ってお弁当も作って、兄妹二人で助け合って暮らしててね。

 ……お金がなくて苦労も沢山したろうけど、それでも本当に仲が良くて、幸せそうな兄妹だったよ……」



目を細め、どこか遠くへ想いをはせるような、緩やかな表情を浮かべる文代。

そこへミクが言葉を挟んだ。



「私、星登さんの妹さんってどんな方なのか今までずっと気になってたんですけど、

 お話を聞いたらとても素敵な方みたいで嬉しいです!

 私もぜひお会いしてみたいんですけど、今はどちらにお住まいなんですか?」



星登の四歳下だと言うから、今は十九歳か二十歳だろうか。

もし進学しているのなら大学二回生のはずだ。

今年の正月には帰ってこなかったから、もしかしたら遠くの大学に進学しているのかもしれない。



だが文代の答えはミクの予想を裏切る、残酷なものだった。



「早輝ちゃんはね、もう亡くなってしまったの」



いらえを返す文代の表情は陰りを帯びている。



「確かもう、三年前になるのかねぇ……、早輝ちゃんが調子悪そうにしてて、

 学校を休んで病院に行ったらそのまますぐ入院しちゃってさ、

 すぐにでも手術が必要だって言われて……、

 だけどあの二人は医療保険になんて入ってなかったからさ、手術費用を捻出するのは大変でね。

 私もいくらかカンパしようとしたんだけど、

 相変わらず緒方さんは『こんな大金受け取れない』なんて言って、結局突っ返されちゃって……。

 何て言うか、歯がゆい気持ちってのはこういうのを言うんだろうなって、思ったもんさね……」



当時の事を思い出したのだろう、文代は深々とため息をついた。



初音ミクSS「君の心は、そこにある」六月二十五日[10]へ

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