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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第三章~懊悩~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)六月二十五日(水)[13]


「ただいま」



星登の声だ。

今まで考え事に没頭していたせいで、彼が階段を登ってくる音に気がつかなかったようだ。

慌てて彼を出迎えるミク。



「おかえりなさい、星登さん」



そうして出迎えた玄関には、星登だけでなく、ある女性の姿もあった。



「こんばんは、お久しぶりね」



井上だった。

数ヶ月前、ミクに自分の邪魔をするなと恫喝して以来、まったく連絡をとっていなかった彼女。

星登と井上は密かに逢瀬を重ねていたようだが、しかし今夜、こうしてここに来訪する理由がわからない。



そうして疑問の渦に巻かれているミクの胸裏を、表情から読み取ったのだろう。

星登が答えた。



「ああ、そうか。ミクには凜奈が来る事を伝えてなかったね。……ああ、ご飯も用意してくれてたのか。

 凜奈の分は、……あるわけないよな。また連絡し忘れちゃったね。本当にごめんよ、ミク」



「ああ、いいのよ星登。今夜は話だけしたら帰るつもりだったし。気にしないで」



「そうかい? 悪いな」



そんな会話を交わす星登と井上の間には、ミクの知り得ない、独特の親密さが漂っていた。

その睦まじいとすら言える二人の雰囲気が、ミクにおいては言いようのない不穏な空気として感じられて、

その場から逃げ出したい衝動に駆られた。



「まあとにかくさ、あがってくれよ」



星登の言葉を合図に、三人は居間へと移動する。



そして各人の前にお茶を振る舞って、ミクはおそるおそる言葉を口にした。



「あの……それで、お話というのは……?」



「ああ、そう、だよね」



対して星登の態度はどこか曖昧で、むしろ照れくさそうな表情すら見せている。

そうして星登が幾度か井上と視線でやり取りすると、おもむろに言葉を紡いだ。



「実はさ、僕たち……結婚することになったんだ」



「……え?」



ミクの時間が凍り付く。



次いで井上が告げた。



「まあ、言いにくいんだけどさ、私のお腹に赤ちゃんが出来たのよ。星登との子供がね」



初音ミクSS「君の心は、そこにある」第四章 ~兇行~ へ

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