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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第四章~兇行~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)七月二十七日(日)[11]


「……3EA8、9D31、68C4、以上です」



『ありがとう、それじゃあ次に場所を教えてくれるかしら?』



ミクは現在位置のGPS情報を送信した。



『……いま届いたわ。ここなら、そうね……早ければ一時間くらいでエンジニアを派遣できると思う』



「一時間? そんな、遅すぎます! お願いですから、もっと早く来てください!」



『ごめんなさい、こちらではこれが限界なの。

 交換部品の用意、エンジニアの調整、移動時間、

 それらを考えればどうしても一時間はかかってしまうわ。

 勿論こちらでもできる限り速く対応するけど……』



「……わかりました。それではなるべく早くお願いします」



それだけ言って、モバイルフォン機能を切った。



ミクはもう一度トシヤのHFDパネルを確認する。

SSDのアラートログはミクが電話している間にも更新され続けて、

いかに危険な状態であるかを示していた。



……この状態で、あと一時間。



間に合うわけがない。

ミクは確信した。

だからこそ、今の自分にできることを考えた。



SSDへの負担を減らすためにも、一度トシヤの電源を強制切断させることを考えた。

……いや、ダメだ。

SSD交換作業後には結局トシヤを再始動しなければならないし、

その再始動時こそSSDへの負担がもっとも大きい瞬間なのだ。

このときにSSDが壊れてしまう可能性は大いにある。

それに今はスリープモードへ移行しているのだから、SSDへの負担は電源を切ったとしても変わらない。

やるだけ無駄と言えた。



続いて、壊されたトシヤのSSDに代わり、ミクに搭載されたスペアSSDを取り付けることを考えた。

……いや、これもダメだ。

SSDの取り付け作業には専用の工具が必要だし、そもそもSSDの着脱パネルは背中側にあるため、

ミク一人で作業できるとは思えなかった。

仮に協力者がいたとしても、第一世代型アンドロイドである<KAITO>と、

第二世代型アンドロイドである<初音ミク>では、搭載しているSSDの形式が違う可能性がある。

時間もない中で、そのような賭けに出る理由はなかった。



データセンターへトシヤのバックアップを取得してはどうだろうか。

……それも現実的ではないように思えた。

バックアップを取得するためにはヒューマノイド制御用マネージメント装置が必要だし、

そのためにはトシヤが常駐するALKOS出張所か、ミクのアパートへ戻らなければならない。

ここからならアパートの方が近いが、それでもトシヤを担いでアパートへ行くのは時間がかかりすぎる。



だが……、こうして考えている間にも時間は刻一刻と過ぎていく。

この間にトシヤは死への階段を着実に上っているのだ。

いずれにせよ、工具も何もないこの場所ではできることなど限られている。

要は時間との勝負なのだ。

ミクがトシヤを担いでアパートへ行く時間と、エンジニアがこの場に辿り着く時間。

この二つの時間を比べて、トシヤを助けられる方法を選択する。

常であれば、ここからアパートまで歩いて十分ほど。

トシヤを担いでも三十分とかかるまい。



決まった。

あとは行動あるのみだ。



ミクはトシヤを背中に担ぐ。

想像以上の重さに一瞬よろめいた。

だが足腰に力を込めて、何とかその場に踏みとどまる。

下腹部に力を入れたせいかぬるみが下着に漏れ出たように感じたが、

ミクはそれを無理やり無視した。



ゴミ置き場を出る。

瞬間、夜の空気がミクを心地よく冷やした。

そうして初めて、中がとても蒸し暑かったことに気づいた。



初音ミクSS「君の心は、そこにある」七月二十七日[12]へ

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