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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第四章~兇行~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)七月二十七日(日)[14]


「そんな……! トシヤさん、しっかりしてください! トシヤさん!」



「……大丈夫……大丈夫ダヨ、みくチャン……」



しかしトシヤの言葉は一層力を失っているように感じた。



「……ボクは、ようヤク、自分の気持チト、コトミの想イヲ、知るコトができたンダ……。

 こんなトコロでは、死ねナイ……。コトミに直接、ボクの気持チを、伝えナイと……」



「そうですよ! 先ほどの告白を、コトミさんの前でしっかりとしてください!

 こんなこと私はお伝えしませんから! こういうことは、ご自分の言葉でお伝えすべきです!」



「ハハ……みくチャンは、厳しイナ……」



力なく笑うトシヤ。



「……わかったヨ、みくチャン……。

 ボクはスリープモードに移行すルカラ……、後ハ、頼、ン、ダ……ヨ……」



それきり、トシヤから言葉が返ってくることはなかった。



そうだ。

これでいい。

SSDへの負担を極力減らすためにも、スリープモードへ移行するのは極めて有効なのだから。



ミクは足腰に一層の力を込めて、アパートへの道のりを急いだ。



トシヤを死なせてなるものか。

彼らの想いを遂げさせるんだ。

自分の想いは実らなかったし、自分の身体すら守ることはできなかったけど、

それでもせめて、彼らの恋だけは絶対に実らせるんだ。



ミクは義務感にも似た決意を胸に、ただひたすら歩を進めた。

トシヤを背負うミクの体は余りにも小さくて、遠目には滑稽にすら映る姿であったが、

しかしミクの胸奥で燃える決意はまさしくひたむきな覚悟となって、

彼女の体に言いようのない力を湧き出させるのだ。



そしてようやく、ミクはアパートに辿り着く。

かかった時間は四〇分。

思ったほど時間をかけてしまったが、

少なくともあのゴミ置き場で待ち続けるよりは良い結果と言えるだろう。



ミクは最後の力を振り絞って階段を上り、部屋の前に佇む。



「星登さん、開けてください、星登さん!」



ミクは扉の前で星登に呼びかけた。

鍵を出す間も、ノックする間も惜しかった。

近所迷惑とか、そんなものはミクの脳裏になかった。

ただ身を焦がすような焦燥だけがあった。



程なくして扉が開けられる。



「どうしたんだいミク! あんまり遅いから、心配した……」



「お願いです星登さん! すぐに私の保守キットを用意してください! お願いします!」



ミクの剣幕に圧倒され、次いで彼女が背負うトシヤの姿を見て、

状況を察した星登は何も言わずにすぐ部屋へとってかえした。



ミクはトシヤを背負い直して部屋の中へ運んだ。

そしてゆっくりと彼を下ろし、PLCケーブルをヒューマノイド制御用マネージメント装置へ繋ぐ。

もしかすればコネクタの形状が違うかもしれないと危惧したが、それは杞憂だった。

カチッと音がして、しっかりと繋がる。



「ミク、保守キットって、このCDで良いのかい?」



差し出されたCDには『運用・保守専用アプリケーションキット』と印字されている。



「はい、これで構いません」



ミクは受け取ったCDをマネージメント装置へ挿入する。

駆動音がやむのを待たず、ミクは装置を操作して、バックアップアプリケーションを起動した。

装置のパネル上にスタンバイの文字が表示される。

これで良い。

あとは装置がトシヤを認識してくれれば、バックアップの完了を待つばかりとなる。

その間にSSDが壊れてしまえば元も子もないのだが、そればかりは神のみぞ知るところだ。

そうならないことを祈るしかない。



初音ミクSS「君の心は、そこにある」七月二十七日[15]へ

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