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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第四章~兇行~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)七月二十七日(日)[15]


「……?」



しかし、いつまでたってもバックアップは始まらなかった。

装置のパネルを確認すると、どうやらトシヤを認識していないらしい。

もしかしてバックアップアプリケーションのバージョンが違うのだろうか?

いや、しかしバックアップ・リストアのアプリケーションとILMAの二つは完全上位互換のはずだ。

ミクのアプリケーションならば、トシヤにも適用できるはず。

装置側に異常は見あたらなかったため、次にケーブルの接触を疑った。

強くケーブルを差し込む。

これも異常はなさそうだ。

最後に、トシヤのHFDを確認する。



「……!」



そこでミクは悪魔の数字を見た。



「……どうしたんだい、ミク?」



星登の疑問に答える余裕はなかった。



HFDに表示されているのは、『0000』の点滅表示。

それは、アンドロイド用OSの再インストールを促す表示だ。

すなわち……現在のデータが、完全にロストされてしまったことを意味している。



間に合わなかった。



冷たく残酷な現実がミクを貫く。

それは確かな質量を伴う罪悪感となって、ミクの体を圧し潰した。



間に合わなかった、間に合わなかった、間に合わなかった!



「う、うわあああああ……! うわああああああ!」



泣き叫ぶミク。

二度と戻らぬ『トシヤ』という存在を前に、ただミクは己への叱責に苛まれるのみだ。



どうしてもっと急がなかったのか。

なぜ路地裏なんか通ったのか。

他にできることがあったのではないか。

その浅はかな思慮こそ、トシヤを殺したに違いないのに!

繰り返される自責の言葉。

そして重くのしかかる無力感。



自分は、自分の身体を守ることもできない、トシヤを救うこともできない、

無力で無様なアンドロイドに過ぎないのだ!

そんな自身を軽んずる言葉ばかりが浮かんでは消えていく。

しかしそうやって己を卑下して軽蔑しようとも、トシヤがかえってくるわけではない。



今夜は、あまりにもたくさんのことが起こりすぎた。



苦痛があった。

辛苦があった。

悲哀があった。

そして、絶望があった。



自身を責め苛むミク。

痛悔に暮れ、慟哭に喘ぎ続けるミク。

しかしトシヤのHFDパネルは、そんな彼女の姿を冷たく見放すように、

ただ無機質な点滅を繰り返すだけだった。



初音ミクSS「君の心は、そこにある」七月二十八日[1]へ

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