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初音ミクSS「君の心は、そこにある」第五章~涕涙~

正徳二十年(西暦二〇〇八年)八月五日(火)
〇八時二八分五六秒三六~〇八時二八分五六秒四八[2]




『あなたは、凜奈という女性を見殺しにしたという事実から目を逸らしているだけでしょう?』



「見殺しになんてしてないわ。私は助けようとした。手を伸ばした。でも間に合わなかった」



『本当にそう? でもあなたは一瞬躊躇したわよね? 彼女を助けるために伸ばしかけた手を、一瞬止めたわよね』



「……だけど、たとえ躊躇しなかったとしても、きっと彼女を助けることはできなかった」



『いいえ、助けられたかどうかは、この際関係ないの。

 重要なのは、あなたが人間を助けることに躊躇を覚えたことよ。

 あなたはアンドロイド。人間に作られたアンドロイド。

 人間の生活を豊かにするために作られたアンドロイドのはずでしょう?

 それなのにあなたは、彼女を助けなかった。見殺しにした』



「でも、彼女は私を殺そうとしたわ。

 階段から突き落とそうとしたのは彼女の方が先だった。

 そして私は自己防衛のために、手すりに掴まろうとした。

 だけど運悪く彼女にぶつかってしまって、そのまま階段から落ちてしまったに過ぎない。

 だからあれは不幸な事故。それだけのはずよ」



『そう、確かに不幸な事故だったわ。

 でもその不幸な事故を引き起こしたのは誰? ミク、あなたよ。

 あなたが彼女を挑発しなければ、彼女は逆上しなかった。

 そうすれば、いくら彼女でもあなたを殺そうとまでは考えなかった筈だし、

 勿論彼女が階段から落ちて死んでしまうこともなかった』



「だけど彼女は星登さんを侮辱した。私の大切なマスターを侮辱した。トシヤさんの死をも侮辱した。

 それに怒りを覚えるのは悪いこと?」



『だからと言って、あなたが彼女を挑発する理由にはならないわ。

 そもそも彼女はマスターの配偶者でしょう? 

 それならば、彼女の言葉はマスターである星登さんの言葉と等価であるはず。

 その彼女に反発するなんて、人間に仕える筈のアンドロイドにあるまじき背徳行為だわ』



「…………」



『あなたは人間に対して憎悪を抱いた。

 人間に仕え、人間を介護し、人間を愛するべきアンドロイドのあなたが、人間を憎悪してしまった。

 創造主たる人間を憎悪したアンドロイドに、果たして存在価値などあるのかしら?』



「……やめてよ……」



『彼女を救うことができたかどうか、この際問題ではないの。

 最も重要なのは、あなたが彼女に憎悪を抱き、そして明確な敵意を抱いた事』



「お願い、やめて!」



『敵意を抱き、人間を平等に救い愛することをやめたアンドロイドは、ただそれだけで人間の脅威になるわ。

 人間を憎み、殺すことを躊躇しなくなったアンドロイドが存在できる場所は、戦場のみ。

 少なくとも、この平和な日本ではあなたの存在価値などありえない』



「やめてったら!」



『認めなさい! あなたは彼女を憎んだ! 殺意を抱いた! そして、』



「いやああああああ!」



『彼女を、殺したんだ!』



初音ミクSS「君の心は、そこにある」幕間 其の四[1]へ

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