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有川浩「海の底」

有川浩の「海の底」を読んだ。面白かった。

とにかくこの本について言えることは、ただひとつ。
熱い。
熱い。
熱すぎる。

機動隊が、自衛隊が、そして己の弱い心を抑え克己せんと奮闘する少年たちが、
もうとにかく熱すぎるのです。

突如横須賀を襲った謎の巨大甲殻類たち。
この人類史上類を見ない未曾有の危機を前に、
機動隊員たちはただ闇雲に負傷者を増やしていくばかり。

そして警察庁は、機動隊にひとつの命令を下します。

"壊走せよ。ただ無様に、散り散りに、間違っても敵に太刀打ちできると思えぬほど、
 完膚なきまでに迷走し、逃走せよ。"


なんと無慈悲な命令でしょう。
ただ負けるために負け、逃げるために逃げ、壊走するために逃走せよ、というのです。
意地もプライドもかなぐり捨て、世間から無様な逃走者と罵られようとも、
国と政治の都合により、ただ機動隊は「コテンパンに、無様に負ける」ことこそが必要であると命令されるのです。

しかし機動隊員も、機動隊に無慈悲な命令を下した幕僚も、
そして勿論彼らを最初から見守っている読者も、知っています。
彼らの誇りある「逃走」こそが、民間人を救うための唯一の手段であることを。

片足をもがれる程の大怪我を負っても、
腕から骨を覗かせるほど肉を削がれても、
それでも彼らは自らに課せられた「壊走」という無情の任務をこなすために、
ただひたすら耐え続けます。

第一機動隊小隊長・住之江の次の台詞に、機動隊員の最後の、しかし最大の意地が垣間見えます。

 「走れ!逃げろ!転ぶな!
  転べば死ぬぞ!
  死んでも逃げ続るんだ!死んでから転べ!」

滑稽なほどの矛盾に満ちた叫び。
しかしその必死の叫びにこそ、
彼らの「壊走」という名の任務に対するプライドが込められているのです。


そして迎えるエンディング。

あ~もう。あ~もう。
塩の街といい空の中といい、
どうして有川浩さんの作品はこれほどまでに
心に清涼の風が吹いてきたような清々しい気持ちにさせてくれるのでしょう。
これまで人間失格仮面の告白といった仄暗い物語ばかり読んできたせいか、
この小説の爽やかなエンディングには本当に心を揺り動かされてしまいました。

今回の小説も本当に素晴らしい物語でございました。
お勧めの本でございます。
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