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世相への痛烈な皮肉に満ちた短編集「アリスへの決別」

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)
(2010/08/10)
山本弘

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恐るべき着想だ。
本書に収録された中編小説「夢幻潜航艇」を
読み終えて抱いた感想がそれだ。
それは人の意識によって世界が確定するという、
シュレディンガーの思考実験を更に拡張させた世界観のもとで物語は進んでいく。
その中で展開される事件は、僕の想像力を越えたものばかりだ。
希望も、未来も、考えたことがすべて「あったこと」として過去を確定し、
実現してしまう世界だからこそ、そこでは不安や絶望すらも実現してしまう世界でもある。
そのような世界においては、人々の生活習慣すら現実の僕たちのそれとは根底から異なってくる。
大枠の生活様式に大きな違いはなかったとしても、
働くことの意義や、日々の生活の糧など、
もっとも根源的な部分では僕らの価値観と相容れないものとなっている。

だが本編が示したもっとも大きな示唆は、
このような物理的にありえない世界観でも、
どこまでも深く思想する想像力さえあれば、
物理法則の異なる世界の文化や世相、事件各種を生み出し得るのだという
驚くべき可能性を示してくれた。
これほどの衝撃は、小林泰三の「天体の回転について」に収録された
「時空争奪」を読み終えたときに抱いた思いにも似ている。
人はこれほどの途方もない物語を作れるものなのだと。
僕と同じ日本人がこれほど壮大な物語を作ってみせたことは素直に誇らしいと思えるし、
反面、己の力量不足に陰鬱ともさせられてしまう。
自分ももっと精進せねば。

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