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80万年という時を越えて何を見るか「タイムマシン」

タイムマシン (光文社古典新訳文庫)タイムマシン (光文社古典新訳文庫)
(2012/04/12)
ハーバート・ジョージ ウェルズ

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ウェルズのタイムマシンを読んだ。面白かった。

時代は19世紀末、とある発明家であり科学者でもある人物の家に数人の知識人が集まり、
彼の説明を「私」が聞くところから物語は始まります。
その中で、すでに「私」は発明家のことを「タイムトラヴェラー」と呼んでおり、
彼こそが本書の主人公であることを読者に示してくれます。

序盤こそ様々な時間移動に関する物理的解釈に費やされ
少々退屈な(しかし理系のオイラにとっては刺激的な)会話が繰り広げられますが、
本当の物語はその次、新聞記者や医者を一堂に会したうえで展開される、
未来を旅した冒険譚の語り口なのです。

タイムトラヴェラーが旅をしてきたのは、80万年後の地球。
そこには人類の叡智などとうに枯れ果て、
ただ大自然たる河川が流れ、緑が生い茂り、
そのなかで人類の子孫であるイーロイ人が暮らしている世界があるだけなのです。
そこにはかつての栄華や叡智も何も無く、叡智の根源であったはずの好奇心すら薄っぺらで、
ただその日その日を面白おかしく過ごし、牧歌的に過ごすことさえできれば
それだけで満足してしまうような人類の子孫の姿に、
タイムトラヴェラーは少なからない絶望を抱いてしまいます。

しかし、それだけで話が終わらないのが本作。
ただ人類の子孫の在り方に絶望するだけで無く、
実はその牧歌的な生活こそが人類の行く末、
すなわち人類がかつて築き上げた経済的格差社会を根源とする
人類という生命体の進化の行く末そのものだったのです。
悲観的というにはあまりにも残酷なその進化の有り様に、
そしてこのような想像の翼を広げて
ひとつの作品に仕立て上げてしまうウェルズという作者の力量に
ただただ感服すると同時に、畏怖の念すら感じてしまいます。

そして彼が次々と旅をしていくのは、
ただ人類という一生命種の行く末を見守るだけでなく、
地球という惑星の在り方と未来の有り様を見つめる旅にまで発展します。
そこで彼が何を見て、何を感じ、何を得て返ってきたのかは、
ぜひ皆さんが本書を読んで、感じ取ってください。
彼が感じた絶望や失望、望郷や郷愁を、本書を通じて汲み取ることができるでしょう。

いやはや、本書は凄まじい一冊でございました。
タイムマシンといえばタイムパラドックスをテーマとした物語構造がお約束ですが、
まさか生命体や惑星の在り方にまで言及し、
恐るべき科学考証でそれらの姿をつまびらかにしてしまう作品が
100年以上前にすでに実在していた現実に戦慄を感じてしまいます。

単純なタイムパラドックス物では無く、
人類、惑星、進化の全てについて想いを馳せてみたい想像力豊かな読者諸賢は
ぜひぜひ本書を手にとっていただきたいと思います。
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