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あまりにも眩しい初恋の物語『東雲侑子は短編小説をあいしている』

最近、ブログのコメント欄がよく荒らされるので、そろそろ移行しようかなぁと思ってた矢先、
Evernoteのブログサービス「Postach.io」というものを知ったので、こちらへ移行したいなぁと思ってます。
まだ移行先は寂しいデザインだし、しばらくは並行更新したいと思いますが、どうぞよろしくです。




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小説とは、ありもしない体験を、あたかも自分が経験してきたかのような錯覚を覚えさせてくれる一種の空想具現装置だ。
いや、幻想や妄想を共有するという意味では、これは麻薬とでも呼んだ方が良いのかもしれない。

何をおおげさな、とあなたは言うだろうか?

だが私にとってこれは大げさでもなんでもない。
本書を読んでいる間、私は間違いなく主人公たちふたりの息づかいを感じていたし、彼らの思考や不安、幸福感を共有できていたと思える。
そして私は思いを馳せるのだ。かつて自分自身が抱いたことのある淡い思いや、そのときに感じたあまねく感情のひとつひとつを、まるで昨日のことのように思い起こし、やがて──己にはもうこのような感情を抱ける体力は残されていないのだと思い知らされる。

森橋ビンゴの『東雲侑子』三部作。
本書はまさしく麻薬であり、読者の思い出を強く強く刺激してくる入魂の一作である。


ここで描かれている物語は、何てことの無い、ただの高校生たちによるボーイ・ミーツ・ガールだ。
少年と少女が出会い、互いを気にかけ、恋に落ちる。
あらすじを言ってしまえばただそれだけだ。
世界は滅びないし、隣家に異世界の魔王や勇者が引っ越してきたりしないし、宇宙からやってきた美少女によるハーレムが築かれることだってない。
ごくごく普通の男女が(ヒロインだけちょっと特殊かも)偶然の出会いを通じ、互いに惹かれ合う。
ただそれだけ、本当にただそれだけの物語が、あまりにも美しく輝いて見える。

「図書委員で一緒になった、ちょっと変わった女の子」から、「少し気になる女の子」へ変わっていく描写はあまりにも鮮烈だし、それがやがて「気がつけばいつでも彼女のことを考えてる自分」に気がつかされるくだりはもう見事と言うほか無い。
その絶妙な心理描写や心境の変化が、技巧的でありながらも実に繊細なタッチで表現されている。

主人公を囲む人物も個性的だ。
小さいころから出来が良くて、コンプレックスを抱かされ続ける兄。
その兄の恋人で、同時に主人公の初恋の女性。
そして、ヒロインである東雲侑子。

主人公は、彼ら身近な人々の間で心を揺り動かし、そして、大いに悩むのだ。
その悩みはあまりに初々しく、微笑ましくて、だけどどこか羨ましい。
私のようなおっさんではもう体験できない、どこまでも青臭い、だけど透き通るような甘酸っぱい感情を、主人公は全身全霊で受け止め、悩み、足掻くのだ。

自分の胸奥に渦巻く感情は、本当に恋なのだろうか?
彼女は本当は自分のことなど何とも思ってないのでは?
むしろ出来の良い兄の方へ好意を向けているのではないか?
そしてなにより、自分はいったい、彼女とどうなりたいのだろうか──?

誠実でありたいと臨むからこそ空回りして、
彼女に嫌われたくないと思うからこそ行動にうつせなくなる。
そんな、誰もが通ってきた若かりし頃の甘く切ない思い出の道を、主人公はまさにいま、全力で駆け抜けていく。
少年は悩み、悶々として、鬱々としながら、でも最後には己の気持ちを真正面から見つめ直して、ついにヒロイン東雲侑子へ告げるのだ。

その後の展開は、もはや語るまでもないだろう。だってライトノベルだもの。辛く悲しい展開など待ってるはずもない。

そしてシリーズは嵐のような2巻と、決断の3巻へ続き、そこでフィナーレとなる。
主人公である三並英太と、ヒロインである東雲侑子。
出会ってから3年間、ずっとふたりでいっしょに成長してきた彼らが迎える結末は、あまりに悲しく、寂しくて、だけれど尊い。
そう感じさせてくれる、清々しいほど気持ちの良いフィナーレなのだ。

正直、私は3巻を読み終えるのが辛かった。
もっとふたりの幸福な時間を読んでいたいと、そう思っていた。
だが3巻のあとがきで「東雲侑子の物語はこれで完結である」とはっきり宣言されている以上、もうこれ以上の物語体験は望むべくもないのだろう。

だが、これだけははっきりと言える。
本書は間違いなく傑作だ。
初恋の甘さと苦みを味わってみたい人にも、
自身の初恋の思い出を切なく思い返したい人にも、
そしてもちろん、ヒロイン東雲侑子の可愛らしさにどっぷり浸かりたい人にもお勧めだ。

まだ2014年は始まったばかりだけど、今年中にこれを越えるほどの作品に出会える気がしない、それほどの衝撃を与えてくれた小説でした。
本当に、おすすめです。
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