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■高野和明「ジェノサイド」

総評:★★★★☆(4点)
このミステリーがすごい!2012で国内小説第一位を受賞した作品。
その肩書きに惹かれてハードカバーで購入してから早2年、このたびようやく読み終えた。
創薬に励む大学院生と、コンゴ共和国でアメリカの秘密作戦に従事する米国人傭兵。
本来であれば何の接点もなく出会いどころかすれ違うことすらなかったはずの二人が出会うとき、人類は進化と繁栄を続けるのか、それとも絶望と滅亡へひた走るのかという分水嶺へとさしかかる。
本書は二人の人物を主軸に物語を展開していく。
一人は日本の大学院生。謎に満ちた父親の死、遺されたパソコン、奇妙な手紙と、そこに書かれた父からの遺言「誰にも話すな、一人だけでやり遂げろ」。
もう一人はアメリカ人傭兵。難病に冒された息子、必要な治療費、それでも徐々に消えようとしている小さな命の灯火、アメリカからの奇妙な作戦命令、内容は「見たことのない生物を殺せ」。
二人の主人公は、自分がいま何をしているのか、自分がやろうとしていることに何の意味があるのかすらわからぬまま、ただ行動に移すことを求められる。
だが物語が進むにつれ、彼らは思い知ることになる。
自分が何をなそうとしているのか。何をやらされようとしているのか。そしてその裏に潜む恐るべき謀略の影を。
テンポの良い物語構成と先を読ませぬ展開は、読者を物語世界へどっぷりと引き込ませること間違いない。
美しい友情も、儚く幼い命の灯火も、それを救うために燃やされる情熱も、吐き気を催すほどの醜悪さも、人間の美しさとおぞましさがこの一冊の中で切実に描写されている。
ただ他の書評でも書かれているように、本書では少々反日・反米思想が過ぎているように感じた。
人によってはこの思想に違和感を感じることもあるだろうが、そういった思想は脇に追いやって、単純に物語だけを楽しむことをおすすめする。
久々に物語へ没入する感覚を味わうことができた。
おすすめ。
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