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小川一水「時砂の王」感想

時砂の王

小川一水の「時砂の王」を読んだ。面白かった。

小川一水先生といえばオイラ内部では
未だにまずは一報ポプラパレスよりでデビューした河出智紀先生であり、
そしてそれ以来先生の作品は全く読んだことがなかったのですが、
どうもamazonレビューなど見るにつけ
すこぶる評判の良い作家になってらっしゃることが窺えたので
こっそりと一冊買ってみた次第なのであります。

そしたら何とまぁ面白いことか!

もう表紙からして凄まじい。
無骨で鈍い銀色の甲冑に全身を包まれた兵士らしき人物と、
どう見てもやんごとない力を持っていそげな、シャーマンのような女性が
並んで立っているという表紙ですけど、
もうね、この表紙がこの物語の全てを物語ってる。

舞台は、西暦248年の日本。
この甲冑の兵士が邪馬台国の王・卑弥呼を、
不気味で、おぞましくて、圧倒的で、不可解な物の怪から救うという、
鮮烈なシーンでもって物語の幕が開きます。

甲冑の兵士の正体は、
2300年後の世界から人類を救うためにやってきたというアンドロイド。
途方もない未来から、想像するだけで絶望してしまう程の過去まで、
ありとあらゆる時間と世界を縦横無尽に駆け回り、
化け物を打ち砕き、敵の住処を焼き払い、
時に仲間を失い、時に仲間を裏切り、
より多くの人間を救うため
敢えてマイノリティーとなった人間を見殺しにする。

そんな精神を打ち砕かれるような闘いを、10万年も繰り返してきた甲冑の兵士。
もはや涙を流す精神力すら枯渇し、
ただ敵を殲滅するためだけに己の腕と兵器を振るい続ける彼の姿は、
想像するだけで心臓を鷲掴みにされたような悲哀と悲壮に満ちあふれているのです。

数えきれぬ敵を討ち滅ぼしてきた。
そして数えきれぬ仲間を失ってきた。
斬られた仲間、潰された仲間、喰われた仲間。
しかし甲冑の兵士の心を完膚無きまでに叩き潰すのは、
見捨てざるを得ない仲間が最期に発する、悲鳴にも似た嘆きだった。

人類絶滅という現実を、ただ黙して受け止めることしかできない軍人の愁嘆。
妻だけでも助けてくれと、兵士の背中に叫んだ男の悲嘆。

絶望に心身を蝕まれ続ける彼らを見捨て、
ただただ敵を殲滅するために殲滅し続ける、甲冑の兵士。

そんな闘いを10万年も繰り返し続けてきた兵士の精神は、
摩耗し、疲れ果て、皮肉めいたシニカルな笑みしか浮かべられぬ程に弱り切っていたのです。

そして彼は、極東の地で出会います。
世界の果てとも言われた極東の地で、一国を治める女王と。
そして彼は、極東の地で迎えます。
10万年にも及ぶ絶望と悲劇ばかりだった闘いに終止符を打つ、最後の決戦を。

余りにも、壮絶な闘い。
そして余りにも、巨大で壮大な物語。
たった一冊の小説で、人類史のありとあらゆる側面を
悲しい兵士の視点から描ききった本作。

面白かった。本当に面白かった。

小川先生は日本SF界の新鋭のスターと呼ばれる程の実力者だということですが、
この一冊を読めば何故そのように呼ばれるか理解できるというものでしょう。
緻密なプロット。
細密な世界設定。
螺旋階段を急落下していくような、
怒濤の展開に終始圧倒されたままあっという間に読み終えてしまう、
そんな小説でありました。
オススメでございます。





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