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「とある飛空士への追憶」が面白い

犬村小六の「とある飛空士への追憶」を読んでる。面白い。

金田一の本陣殺人事件を読み終え、
続いてフランさんと平和さん推薦の「とある飛空士への追憶」を読み始めたのですが、
これがもう何とも面白すぎて、
未だ読み終えてぬ身なれど
とにかくこの迸る感情をここで吐き出さなければ
いてもたってもいられないくらいに興奮してしまいました。

もうね。
1ページ目を繰った時点で、この小説の凄まじさをまざまざと見せ付けられるのです。

とある少年が空腹と貧困のために、
その短すぎる人生に終止符を打とうとする、
そんな衝撃的な、しかし世界のどこかで今だに繰り広げられている悲劇から、
物語の幕は開きます。

その少年の悲しみ、苦痛、孤独、そして絶望が、
犬村氏の類稀なる文筆力によって、
生々しく、途方も無い痛みを伴って描かれていくのです。

裏路地の暗がりで、ただひっそりと死んでいこうとする少年。
昼間ですら太陽の光が届かない路面は、
人々に吐き捨てられた唾と
家の窓から捨てられる糞尿の臭いが立ちこめ、
痩せこけた野良犬は饐えた臭いを撒き散らしながら生ゴミを漁り、
ここで少年が死のうとしているのに誰も興味を示さず通り過ぎていく、
そんなただただ陰鬱とした空気のみが支配する裏路地。

自国の戦艦が飛び立ち、
町の住民がみな歓声を上げても、
少年は目線を上げる体力しか残されていませんでした。

目線を上げれば、そこには戦艦の勇姿。
青く澄んだ、貧困も差別も空腹も何も関係ない、
全てに平等な大空へ向かう戦艦。

底なしの絶望に呑み込まれ、
死の沼に沈み込もうとしている少年にとって、
暗い建物に小さく切り取られた青空と、
母が生きていた頃、一度だけ会った少女との微かな思い出だけが、
少年の心に小さく儚い光芒となって、
死の間際の暗い心中を照らしていたのです。

そんな、余りにも悲しく、鮮烈な印象を伴って始まるこの物語。
特筆すべきは、プロットの妙でも、少年の悲惨な人生でもなく、
どこか仄かな悲哀を孕む物語を演出する、犬村氏の卓越した文章力なのです。

プロローグにおける少年の絶望、
大空へと飛び立つ飛空士の興奮、
流れいく雲に昂ぶる感情を抑えられぬ王妃の心、
雲の上で向かえる朝焼けと日暮れの美しさ、
それら全てが、犬村氏の鮮鋭な描写力で持って紡ぎ出されていくのです。

先日読んだ「砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない」における桜庭氏の文章でも、
豊かな表現に感動したことを日記に書かせていただきましたが、
この犬村氏の感性の豊かさには羨望の念を禁じえないほど素晴らしい。

犬村氏の描写は余りにも美しすぎて、
そこに描き出される情景、心情、景色などが
今目の前にあるかのような錯覚を覚えてしまうほど。

俺が愛してやまない村山由佳先生の文章も、
本当に感性豊かで、景色や心情は勿論、
いまそこに吹いてくる風の温もりや
ほのかに体に巻きついてくる陽光の暖かさ、
そして鼻腔をくすぐる土地の香りなどなど、
本当に五感全てを使って情景描写を行うのが先生の特徴なのですけど、
犬村氏の文章も先生の文章力に負けずとも劣らない、
本当に非凡な描写力を持ってらっしゃってて、
読んでいて凄く心地よいのです。

おいらは未だ小説を読み終えぬ身ではありますが、
物語の入り、プロット、描写、全てにおいて
非常に傑出した作品であることが伺えます。
素晴らしい傑作の香りをぷんぷんと漂わせる本作品。
まだ半分ほどしか読んでませんが、
ぜひ人に勧めたくなる小説です。オススメ。

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